「としまえん」の近くで生まれ、「としまえん」を庭のようにして育ちました。「としまえん」の94年の歴史の３分の２を共に歩んで来ました。どこを見ても何を見ても思い出が甦り、胸が熱くなります。
　乗り物に案内されて異空間を体験するミステリーゾーンやアフリカ館がオープンしたときの驚き、美しいカルーセルエルドラドがやって来たときの喜びなど、今も鮮明に思い出すことができます。エルドラドの馬車には、少女漫画の王女様になったような気分で乗ったものでした。
　春は家族でお花見に行き、石神井川にかかる桜並木の美しさに見とれていました。夏は波のプールで、時間が経つのも忘れて波打ち際で友人と海の気分を味わいながら夕方まで話していました。あるときは夕立が来て、裏門から走って家に帰ったことも良い思い出です。
　樹木の多い「としまえん」の夏は、いつも蝉の声が聞こえていました。今日も「としまえん」を訪ねて、蝉の声を聞き、私たち家族の幸せな時間がここで生まれていたことを確信しました。両親や姉妹の笑顔に囲まれていたかけがえのない時間が、今はひたすら愛おしくてなりません。
　「としまえん」が閉園してしまうことは大変残念で悲しく寂しい気持ちですが、新たに生まれ変わるこの場所が再び多くの人に夢を与えてくれる場所になることを希望します。そして、何かの形で「としまえん」という名称はもちろんのこと、多くの子どもたちを育てて人々にに愛された遊園地があったことを、その歴史とともに伝えてほしいと切に願っています。本当に寂しく辛い気持ちですが、数々の思い出を作ってくれた「としまえん」をいつまでも忘れません。「としまえん」の記憶は、私のこれからの日々を支えてくれると信じています。ありがとう、「としまえん」。　
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　羽矢みずき