naox さま

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ブルターニュに関する2つの美術展が東京で同時期に開催中ということで、これは偶然なのでしょうか。どちらを先に行くか迷い、内容を調べました。国立西洋美術館の「憧憬の地 ブルターニュ」展はこの美術館所蔵の「松方コレクション」を含む国内約30箇所の所蔵先と海外からはオルセーのモネとナント歴史博物館のターナーの作品で構成されているそうです。ブルターニュを描いた黒田清輝や藤田嗣治など日本の画家たちにも焦点が当てられるそうです。

一方、SOMPO美術館の「ブルターニュと光と風 -画家たちを魅了したフランス〈辺境の地〉」展は、ブルターニュのカンペール美術館からの出品が主です。この美術館の所蔵作品を見るのは初めてだったので、こちらを選びました。
ブルターニュといえば、クレープやガレット、りんごのお酒であるシードル、ゲランドの塩など食べ物が有名で、カンペールというシューズ・ブランドもよく知られています。フランスの北西部に突き出たブルターニュ半島は複雑な海岸線を持ち、風光明媚な風景を求めて、19世紀初頭から多くの画家たちが訪れるようになったそうです。

海をテーマにした風景画では海の様々な表情が描写されていました。一番ドラマチックな一枚は、アルフレッド・ギュの「さらば!」で、嵐の海に投げ出された父が溺死した息子に口づけしようとしている様子を捉えた一枚です。大自然の脅威の前には我々人間の存在がいかにはかないものかが示されています。

テオフィル・デイロール「鯖漁」は漁師の服装がおしゃれに見えました。アルフレッド・ギュの「コンカルノーのイワシ加工場で働く娘たち」では、女工さんたちの服装が白いコワフ(帽子)を頭にかぶり、黒いワンピースの上に白いエプロンを付けたブルターニュ地方の伝統的な衣装で、とてもかわいいです。彼女たちの気を引こうと漁師らしき若者がバケツに大量に入った鰯を見せています。彼女たちは彼に陽気な表情を見せて、仕事終わりの若者たちの楽しいひとときを想像させる一枚です。この伝統衣装を着た女性の絵は肖像画でも多く見られました。また、畑でじゃがいもを収穫する農婦たちもこの伝統衣装を見に付けており、19世紀当時は、日常着であったことがわかります。

ブルターニュに集った画家たちのなかには、モネやゴーギャン、ピエール・ボナールなどよく知られる画家もいます。モネやゴーギャンはそれぞれ独自のスタイルを確立する前の画風で、わりと普通の絵だったのが興味深かったです。印象派からナビ派、そして1940年頃まで時代とともに移り変わる美術史の流れを概観することができる展示でした。

この特別展示が終わると、SOMPO美術館の所蔵品であるゴッホの「ひまわり」とゴーギャンの「アリスカンの並木路、アルル」も見られます。