Eccentric pages さま

Eccentric pagesさまの口コミ

4 / 5とても良い

古代メキシコ文明のそれぞれの特徴が、時系列および地域ごとに、わかりやすく展示されている。トウモロコシの神やカカオの精霊のようなものも展示されており、日本の多神教に似たような雰囲気を味わえる。

他方で、そそかしこに生贄にともなう血の臭いが立ち込めている。急所を刺して、血を吹き出させて、生贄として処理する呪具として、キリが展示されていた。中世の日本では皇族や将軍の子弟のうち、跡継ぎではない人々は僧籍に入れられた。こうして不要な子種が後世に残らないように操作されていた。古代メキシコでは、より直接的に、生贄として扱われていたようだ。

スペインによる侵略を受ける直前まで栄えていたテノチティトラン(現在のメキシコシティ)を首都とする国家であるアステカは、土着の生贄の文化を被征服者に対する威圧の道具として大々的に利用していたようだ。その反感からアステカは簡単に内部の結束を失い、スペインの軍事侵攻を前にして、ロクに反抗もできず、呆気なく蹂躙された。

文明が萌芽から破局に至るまでの経緯をひとまとめに実感する上で、この特別展ほど有意義なものは稀である。ただし細心の注意は不可欠である。展示物のすべてが撮影自由とされているとはいえ、その多くが呪物であることを考えれば、いずれも自身のスマートフォンで撮影することは差し控えたほうが賢明と思われる。