匿名 さま

匿名さまの口コミ

5 / 5素晴らしい!

繊細で謎めいた空間。人間が作り出したものなのに、作為がなくて、ただそこにそれがあるような。展示室間を移動する間に博物館の通常の展示を見ることになるのも、非常に面白い構成。時間をかけて歩いて座って「何か」に「触れた」と感じたとき、不思議に明るい気持ちになった。たとえば、「触れた」と感じたのはこんなこと:本館特別5室で、ほとんどのガラスケースの角には、ティーバッグの持ち手を小さくしたような形になった「まぶた」が控えめにひらひらしている。「足形」に向き合う位置に配された「座」にすら「まぶた」がある。そうした中で、丸い土玉が収められたガラスケースだけ、「まぶた」がなくて、代わりに「世界に秘密を送り返す」小さな円形の鏡がある。秘密を送り返すには一瞬のまばたきもしない? そして、その鏡の真上で対峙するガラス球。ほかのガラス球よりも一段低い位置にあって、吊るされているというより、浮かびながら静止して見える。鏡に対峙する緊張感と軽やかな浮遊感が同居する矛盾。(内藤礼「生まれておいで 生きておいで」2024.9.3)