匿名 さま

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今回「触れた」と感じたのはこんなこと:東博第1会場を照らすのは展示用のガラスケース内の照明だけ。会場入り口からは黒い丸に見えたものが、展示ケースに近寄るにつれ、ケースの外に吊られた色とりどりの鮮やかなボンボンだったとわかる。光源と鑑賞者の立ち位置だけでなく、ボンボンの色にも関係があって、鑑賞者が光源に近づいていく場合には淡い色ほど早く色が出現し、逆に光源から離れていく場合は濃い色ほど早く色が消失して黒いシルエットになる。これは、「色はどこから始まるか」の体験なのではないか? そう、タイトルはcolor beginning! 一方、エルメスフォーラム会場の細い毛糸でできた大縄跳びの縄のような形のcolor beginningは、非常に明るい会場内で、最初、白っぽく見える。しかし、視覚がチューニングされるにつれ、意外にも鮮やかな色で構成されていることに気づいてはっとする。長さと色味の異なる細い毛糸を極細の糸で縛ってつないであるのだ。これも、自分の目の中で「色が始まる」体験だった。そのほか、3回目にして初めて、東博第2会場の鹿の骨と猪の骨のケースの上にだけ、茶色のボンボンが少しつぶれた細長い形になって、置かれているのに気付いた。数千年前に毛皮を着て野にいたときの姿を遠くからながめているよう。日常の中で陳腐化しつつある「寄り添う」という言葉が、浄化されて結晶して、もふもふになるとこういう形をとるのかもしれない。(2024.9.19.内藤礼「生まれておいで 生きておいで」(東京国立博物館会場は9月3日、9月12日に続き3回目)