ちび さま

ちびさまの口コミ

4 / 5とても良い

私は商人の娘で昭和の生まれ。町の商店街で育った。高度成長期の名残りを辛うじて覚えている。今、その商店街は活気をなくし、コロナ禍の影響もあり、半ばゴーストタウンに近いものがある。そんな私が、オープンしてからずっと行きたいと思っていた場所がある。今年の5月19日に新しくリニューアルオープンをしたという西武園だ。
 「古き良き昭和の時代」をコンセプトに生まれ変わった。目玉は園内にある「夕日の丘商店街」と「ゴジラ・ザ・ライド」だ。念願かなって夏休みを利用して行くことができた。
 西武線の西武球場前で山口線に乗り換え、西武ゆうえんち駅を降りて下車すると、すぐに入り口がある。目の前には「夕日の丘商店街前」という看板の横に路面電車が置かれていて、中に入って座席に座ったり、写真撮影が可能になっている。
 開演前に行って並んでいたので、待っている間、チケットブースで渡された夕日の丘新聞やその他のガイドを見ていた。その新聞が見事だった。どこから見ても「昭和の新聞」という感じに仕上がっている。写真は1枚もなく、そのかわりにすべて手書き風の絵がたくさん描かれている。1面にはゴジラ・ザ・ライドに直結する意味をもたらすような記事の、「巨大不明生物」が現れたという見出しと大迫力の絵、中面には園内の地図、夕日の丘商店街のニュースなどが盛りだくさんに書かれていた。その出来栄えに感服した。基本を忠実に押さえてあり、レトロ好きにはたまらない仕上がりになっていて、インテリアアイテムとしても通用するのではないかと思うくらいだった。思わずもう1部保存用としてもらってしまった。
 まもなく開演時間を迎え中に入った。エントランスを過ぎるとすぐに夕日の丘商店街がある。
活気のある掛け声が聞こえる。すると一番入り口付近にある交番の駐在さんが何やら商店街の魅力を大きく張り上げて話している。その流暢で見事な語りっぷりに、足を止めて聞き入ってしまうお客さんも多く、時折拍手も上がる。
 中ほどに進んでいくと、あちこちのお店屋さんが、それぞれの役に完全になりきっていて、寸劇が始まっている。バナナのたたき売りだったり、自転車屋さんが若い女の子に良いカッコを見せたくて曲芸を始めてしまったり。すると、野菜嫌いの魚屋さんと、好敵手の八百屋さんが喧嘩をしだした。何とも微笑ましい口喧嘩に、周りのお客さんも思わず笑みがこぼれる。売っている物も、すべてが懐かしい物ばかりで、食べ物も完ぺきに再現されていた。歩くたびに感嘆のため息が出てしまう。
 メイン通りから外れた部分はどうなのだろう?と思い、裏路地を見てみると、コソコソ歩く人がいた。何と、泥棒である。いかにも昭和のという風貌である。思わず「あ!泥棒!」と声が出てしまった。泥棒は私に向かってニヤリと笑い、人差し指でシー…と言って、魚屋さんで盗んだのであろう、イカを左手でヒラヒラさせて逃げていった。
 すべて役者だとはわかっていても、完全になりきっている商店街の人たちは、来た人たちを驚かせて喜ばせてくれている。これぞプロの技だった。
 魚屋さんのイカのしょうゆ焼きの香りや、お肉屋さんから揚げ物の香ばしいにおいがしてきたので、お肉屋さんのメンチカツを食べることにした。木の板に、メンチカツの他にクロケットと書かれている物もあった。「クロケットって何ですか?」と聞くと、「コロッケです!うちのコロッケは自慢のコロッケなんだ!美味しいよ!」と言われた。だがしかし、私はメンチカツを買った。アツアツの大きな美味しいメンチカツは、1つ食べたらお腹がいっぱいになった。
 私の居た商店街には、バナナのたたき売りや、曲芸をする自転車屋さんや、コソコソうろつく泥棒はいなかったけれど、ここには間違いなく、あの活気あふれていた商店街があった。あの小さな頃の、なんのしがらみや心配事もない、無邪気な子供時代。懐かしさで胸にこみ上げるものがあって、目には見えない大切なプレゼントをもらったような気がした。
 ただ、少し残念な事は、古き良き昭和を完全に再現する為に、独自の「西武園通貨」というものがあるのだが、全てこの通貨でないと買い物が出来ない。これがとても使いずらい。10円札と100円札があり、1円が12円となる。つまり10円札は120円だ。しかも、この通貨はその日しか使うことが出来ず、一度換金すると、使い切ってしまわないといけないというルールがある。さらに、郵便局で換金できるのだが、すごい長蛇の列でとても時間がかかる。これにはあちこちでクレームが聞こえた。改善の余地があると思う。
 「夕日の丘商店街」ぜひ1度、体験してみてほしい。

店舗情報

西武園ゆうえんち 口コミ(39,858)
この店舗をシェアする

この店舗のプラン全47件