ぽったー さま

ぽったーさまの口コミ

5 / 5素晴らしい!

後期印象派のマルタンとシダネル。まとめたものを見るのははじめてでした。そもそもが後期印象派の作家をあまり知らなかったので人物について知ることができたのがとても良かったです。まだまだ知らないことがあると知識欲も深まりました。もっと多くの印象派画家を知りたいと思いました。三菱一号館に伺った際に展示があったレッサー・ユリィ、彼は「光」にフォーカスを当てた描き方をしていると思いましたがこちらの方々は「空気」を大事に描いているのだと比較が出来ました。印象派を起因とする画家でも受け止め方、受け取り方、その表現方法に違いがあり面白いです。今回の展示はひろしま美術館でも開催がされたそうで、あそこの美術館がとても好きな私としてはひろしま美術館との雰囲気も相まってとても良い展示になっていただろうな、と広島に行けなかったことが悔やまれました。そちらの展示については今回、購入させていただいた本展示の図録を参照させていただきながら想像を膨らませたいと思います。こちらのSOMPO美術館の話に戻すと、SOMPO美術館ビル自体のステンレスのような外観や内装のスタイリッシュさからくる清涼な雰囲気ともとてもマッチしており、不思議な気分になりました。印象派はどちらかというと描かれる対象が多くなりミニマルな雰囲気とはイメージとして一致しないのですが、画家の絵が表現しているものがシンプルだからかとても鑑賞しやすかったです。マルタンの壁画(実際には見ることができないためタペストリー展示がされていたもの)、シダネルの人々が居た余韻を切り取る風景画、その修作などを見ながらとても良いひと時をSOMPO美術館で過ごせたと思います。その中でも私はマルタンの人物画がとても印象深く、魅了されました。顔の輪郭に近づくにつれて濃くなっていく筆跡、絵の具。鳥肌が立っているのではないかと思うくらい毛羽だった人の顔に引き寄せられました。近くで見ると全く表情がわからないくらいに色で分解されているのに少し離れて見るとその表情が浮かび上がってくることにおどろきました。ミステリアスに浮かび上がる笑顔に釘付けになり気付くとしばらく足を止めて鑑賞してしまっていました。展覧会の最後にSOMPO美術館の特徴であるゴッホのひまわりが飾られているのですが、マルタンとシダネルの展示の中でひとつだけゴッホの展示なので初め見た時には「これは飾られているんだ…」と一瞬面を食らいましたが、マルタンとシダネルの絵、その2人とゴッホの絵との共通点というか印象派の流れのようなものが見つけられて感動しました。ゴッホがそこに飾られていて良かったです。今回の2人の画家ともに、時代によってそれぞれかなり色遣いが変わっていて淡いときもあれば明るい時もあり、それがSOMPO美術館の階層ごとに分かれて展示されている様が楽しかったです。展示数も多く、3階層にわたって展示がされており、画家たちの生きた系譜が見て取れたのが良かったです。絵のイメージ的には印象派の中ではかなりマイルドになっていて学術に印象派が受け入れられて学問として噛み砕かれた技術としての印象派が出来上がっていたのだなと感じました。テンプレートとしての印象派的手法が成り立っている中でそれぞれの個性を出していくことにはきっと苦労をされたのだろうと思いを馳せました。個人的にはシダネルとマルタンの誕生日が近くで私の誕生日とも被っているところに親しみを覚えました。マルタンの人物画に魅了されたと上記で書きましたが風景画も美しく、その多彩な表現力に脱帽でした。シダネルの象徴主義の作風はどこか力が入りすぎているところがあり、絵は美しいが感情移入できないな、とかんじていたのですが、最後にその象徴主義に捉われない、象徴主義を噛み砕いて完全に自分の一部とした画風に転じて伸び伸びと描き始めた(と勝手に思っている)ところでは私も何故か解放された晴れやかな気分になり共感をしました。初期の画風から大きく変わっている訳ではないのですが表現されている物によってこんなにも大きく印象が変わるものなのだなと面白かったです。マルタンもシダネルも晩年には大きな庭のあるお家に住み、その風景や家族を描いていましたが、肩の力の抜けた和やかな雰囲気にはホッとした気分にさせられました。全体を通して喜怒哀楽感情を多く揺さぶられた展覧会でした。また機会があればマルタン、シダネルともに会いたい作品、画家です。とても良い展覧会なのに平日10時に伺った際には入場者数も少なく鑑賞しやすかったです。料金もアソビューで買うと大人一枚1500円と作品の展示数に比べると高くない、むしろ安いと感じられるくらいのものです。満足感が凄かったです。館内の写真スポットも3箇所ほどあり嬉しかったです。学芸員様のパッションを感じる展覧会でした。ありがとうございました。