山梨県甲府市の芸術の森公園内にある山梨県立美術館は、国内外の有名作家の名作を鑑賞できる場所として全国的に知られています。また、美術館がある芸術の森公園は四季折々の自然を満喫しながら散策できる山梨県でも屈指の人気スポットです。美術鑑賞はもちろんのこと、紅葉狩りやピクニックなど、それ以外の目的でも1年を通して多くの人が訪れます。そこで、今回は山梨県立美術館の見所と営業時間、アクセスなどについて詳しく解説いたします。
山梨県立美術館とは
山梨県立美術館は、山梨県甲府市貢川の「芸術の森公園」内にあります。2018年現在での館長は、かつて国立美術館理事長や国立西洋美術館館長、文化庁長官を歴任したことで知られる美術史学者の青柳正規です。1978年11月3日のオープン以降、国内にある美術館の中でも来館者が多い美術館として知られています。2006年の10月には総入館者数1,000万人を記録しました。美術館のコレクションでは19世紀のフランス画家ミレーの代表作である「種をまく人」や「落穂拾い」が展示されていることで有名です。そのことから、通称「ミレーの美術館」とも呼ばれています。
山梨県は元々文化施設が未整備だったことから「文化不毛の地」と呼ばれていました。そうした悪評を覆すため、当時山梨県知事だった田邊圀男が美術館の設置事業に着手したのです。また、置県100周年記念事業として19世紀のフランス画家ミレーの代表作「種をまく人」を購入したことを皮切りに、バルビゾン派の画家たちの作品を収集することになりました。ミレーのほかにクールベやターナーなどです。そのほか、美術館では萩原英雄を始めとした山梨県出身や山梨県に縁のある芸術家たちの作品も多くコレクションしています。
この美術館は、芸術の森公園や同公園内にある山梨県立文学館とともに山梨県の文化的拠点としての機能も果たしていることを見逃すわけにはいきません。公園でも1年を通してさまざまなアートイベントが開催されていますし、美術館の1Fには3つの県民ギャラリースペースが設けられています。そのため、ただ芸術作品を見て楽しむというだけでなく、より深くアートと関わることのできるスポットとなっているのが特徴です。とりわけ芸術の森公園は芸術作品と豊かな自然が融合した空間となっていることで人気があります。
ミレーを始めとしたバルビゾン派の画家たちの有名作品を数多く展示!
山梨県立美術館内2Fの北側はコレクション展示室となっており、ミレー館と名づけられています。19世紀フランスの画家であるジャン=フランソワ・ミレーは本国フランスのみならず、日本やアメリカでも特に高い人気がある画家です。その代表作として、山梨県立美術館が所蔵している「種をまく人」が挙げられます。作品にこめられた政治的メッセージが当時論争を巻き起こしたこともあり、美術史の教科書には必ずといってよいほど登場する作品です。ミレーの作風は後の印象派の画家たちやフィンセント・ファン・ゴッホなどにも大きな影響を与えたといわれています。
山梨県立美術館がミレーの作品を多くコレクションしている理由は、ミレーの作品群が自然の豊かさとその中で素朴に生きる人々を描いているからです。そのモチーフが自然に囲まれた山梨県の風土と一致していることから、美術館が開館する際、コレクションの中心とするべき作家となりました。そのため、ミレー館の第1室では「種をまく人」や「落ち穂拾い」といった有名なミレーの作品が展示されているだけでなく、彼の生涯や作品についても深く学ぶことができます。山梨県立美術館が所蔵するミレー作品の数は70作以上にもおよび、世界でも有数の収蔵量を誇っているのです。
ミレー館第2室では、ルソーやディアズ、トロワイヨンといったミレー以外のバルビゾン派における画家たちの有名作品が数多く展示されています。これはミレーを始めとしてフランスのバルビゾン村で活動した画家たちの作風もまた、緑豊かな山梨県の風土に合っているためです。そうしたことから、第2室ではバルビゾン派の画家たちだけでなく、クロード・ロランやクールベのような西洋の風景画家たちの作品も多く展示されています。これら山梨県立美術館が所蔵しているコレクションはあまりに数が多いため、一度に全部を見ることはできません。第1、第2展示室では年に4回展示替えを行っており、常時テーマに沿ったコレクション展が開催されています。
山梨県を代表する芸術家の作品にも触れられる
美術館内2Fの南側には、萩原英雄記念室と特別展示室があります。萩原英雄は1913年、山梨県甲府市相生町に生まれました。元々は西洋画を学んでいたものの、戦後に木版画の制作を始め、1960年には「石の花」シリーズで第二回東京国際版画ビエンナーレグランプリを獲得します。1988年にはノーベル文学賞を受賞した川端康成の記念品を製作したことでも有名です。山梨県立美術館は山梨県出身の芸術家である萩原の作品を多くコレクションしており、萩原英雄記念室でその多くを常時鑑賞できます。また、彼は生前多くの美術飼料を収集していました。美術館では彼が蒐集したコレクションの一括寄贈を受けていることから、記念室内でそのコレクションの一端を垣間見ることができます。
同じく2Fの南側にあるのが特別展示室です。ここでは、館内のキュレーターが独自に企画したテーマ別の特別展が定期的に開催されています。開館40周年となる2018年には「佐野洋子の世界展」や「シャルル=フランソワ・ドービニー展」などが開催されました。特別展は日本や海外の近現代芸術家たちの作品を中心としたラインナップになっています。美術や芸術の初心者からマニアまで幅広く楽しめるのが特徴です。とりわけ、2018年1月から3月まで開催されていた「山梨県立美術館物語 40年間のストーリー&ヒストリー」は県内外からの大きな注目を集めました。山梨県立美術館のこれまでの活動を振り返る展覧会だったからです。
ミュージアムショップやレストランも充実
館内1Fにはミュージアムショップやレストランがあります。ミュージアムショップで取り扱っているのは特別展や常設展関連グッズのほか、美術関連書籍などです。また、山梨県の特産品をこのミュージアムショップで購入することもできます。ミュージアムショップで特に人気なのは、開館40周年記念グッズとして販売されている「桔梗信玄餅」です。山梨県の名産品である信玄餅を、ミレーの「種をまく人」のアイコンを使用したオリジナルパッケージで包んでいます。そのほか、県内の老舗企業である株式会社印傳屋のがま口もミュージアムショップで購入できる人気商品です。
レストラン「Art Archives」では、展覧会の鑑賞前や鑑賞後にのんびりと落ち着いた時間を過ごせます。人気メニューは、富士農場で育てたさくら卵を使用した「ふわふわ卵のオムライス」です。そのほかにも、コーヒーや紅茶、季節のデザートなどを楽しめます。レストランの座席数は約70席です。レストランには、展覧会のチケットを持っていなくても入店できるため、多くの人が普段使いもしています。結婚式の2次会や両家の顔合わせ、挙式・披露宴の場として使われることも多く、アットホームな挙式が催せる場所として人気です。
芸術の森公園内で自然を満喫
山梨県立美術館は芸術の森公園内にあります。芸術の森公園は丁寧に整備された四季折々の自然を満喫できるため、1年を通して多くの人が訪れる人気のスポットです。とりわけ紅葉の季節になると、真っ赤に染まった木々を見にたくさんの観光客が訪れます。公園内にはバラ園やボタン園、日本庭園などもあります。中でも有名なのは、山梨県立文学館の近くにあるショウブ園です。ショウブ園では新緑の季節になると、1,200本ものショウブがいっせいに咲き始めます。緑とパープルによる美しいコントラストを楽しめるでしょう。そのほか、天気の良い日は富士山が見える「みるじゃんの丘」も園内で人気のスポットです。
また、園内にはさまざまな彫刻やオブジェが配置されています。現代芸術家である岡本太郎の作品のほか、「考える人」の彫像で有名なオーギュスト・ロダンの作品などです。中でも人気のオブジェとして、甲府市出身の美術作家である佐藤正明の作品「ザ・ ビッグ・アップル No.45」が挙げられます。このオブジェは県立美術館の30周年を記念して制作されました。巨大なリンゴの形をしており、表面には365個の穴が空いています。立つ位置によってまるで手のひらの上にリンゴを乗せているように見えるため、ここで写真撮影をする多くの人と出会うことができるでしょう。
山梨県立文学館にも足を運んでみよう
県立美術館と同じく芸術の森公園内にある山梨県立文学館も人気のスポットです。オープンしたのは1989年で、近世から近現代における文学資料を幅広く収集しています。常設展示は山梨県に縁の深い芥川竜之介と飯田蛇笏の資料を中心として、樋口一葉や山本周五郎、村岡花子らの資料などです。とりわけ芥川龍之介や飯田蛇笏、樋口一葉に関する資料は質量ともに国内有数のコレクションとして知られています。それらのコレクションの一部を常設展で鑑賞できるほか、文学に関する企画展も開催している文学館です。
山梨県立文学館では展示だけでなく講堂や研修室、茶室などの貸し出しも行っています。そのため、そうした施設を利用したイベントが多いのも特徴のひとつです。たとえば、講堂では職員が講師をつとめる文学講座のほか、名作映画鑑賞会や落語の寄席などが開催されています。茶室では毎年秋に参加無料の「芸術の森公園茶会」が人気です。紅葉を眺めながらお茶や和菓子を存分に満喫できるこのイベントには、毎年多くの人が参加しています。
文学館の1Fにはスイーツで有名な「黒蜜庵きなこ亭山梨県立文学館店」があります。公園散策や美術館・文学館に立ち寄った際にふと一息つけるスポットとして人気です。黒蜜庵きなこ亭は山梨県各地に店舗を構えている和カフェで、運営元である和洋菓子製造会社桔梗屋の桔梗信玄餅はさまざまなおみやげグランプリで金賞を獲得しています。桔梗信玄餅を使ったパフェやケーキといったオリジナルメニューも評判です。
山梨県立美術館の料金
- コレクション展
- 一般:510円
- 大学生:210円
- 高校生以下の児童・生徒:無料
- 65歳以上の方:無料
- 障害者手帳持参の方と介護の方:無料
- 特別展
- 一般:1,000円
- 大学生:500円
- 県外シニア(65歳以上):1,000円
- 高校生以下の児童・生徒:無料
- 県内シニア(65歳):無料
- 障害者手帳持参の方と介護の方:無料
- パスポート(コレクション展+特別展)
- 一般:1,260円
- 大学生:590円
- 美術館(コレクション展)と文学館(常設展)の共通券
- 一般:670円
- 大学生:340円
- 65歳以上の方:無料
- 年間パスポート
- 一般:3,080円
- 大学生:1,540円
- ミュージアム甲斐in券
- 一般:5,150円
- 大学生:2,580円
山梨県立美術館の割引クーポン
山梨県立美術館には、20名以上の団体割引のほか、前売り券割引と県内宿泊者割引があります。県内宿泊者割引は、山梨県内にある旅館やホテルに宿泊した場合に利用できる割引です。宿泊当日に利用する場合はホテルや旅館の予約クーポン券を、宿泊翌日に利用する場合は宿泊領収書などを窓口で提示することで割引が受けられます。
- 20名以上の団体割引
- コレクション展
- 一般:通常510円→420円
- 大学生:通常210円→170円
- 特別展
- 一般:通常1,000円→840円
- 大学生:通常500円→420円
- コレクション展
- 前売り券割引
- コレクション展
- 一般:通常510円→420円
- 大学生:通常210円→170円
- 特別展
- 一般:通常1,000円→840円
- 大学生:通常500円→420円
- コレクション展
- 県内宿泊者割引
- コレクション展
- 一般:通常510円→420円
- 大学生:通常210円→170円
- 特別展
- 一般:通常1,000円→840円
- 大学生:通常500円→420円
- コレクション展
山梨県立美術館の営業時間
- 開館時間
- 9:00~17:00
- 入館は16:30まで
- 定休日
- 月曜日(祝日の場合はその翌日)
- 祝日の翌日(日曜日の場合は開館)
- 年末年始、その他臨時開館・休館あり
山梨県立美術館のアクセス
公共交通機関を利用する場合
JR中央本線「甲府」駅から御勅使(みだい)・竜王経由敷島営業所・大草経由韮崎駅・貢川(くがわ)団地各行きのバスに乗って約15分。(料金:片道280円)タクシーだと約15分。(料金1,700円程度)
車を利用する場合
中央自動車道「甲府昭和IC」から約10分
山梨県立美術館の駐車場
駐車場は、山梨県立美術館と文学館共同の駐車場が芸術の森公園内にあります。無料駐車場なので割引などはありません。
- 名称:山梨県立美術館・文学館 第三駐車場
- 住所:山梨県甲府市貢川1-4-27
- 営業時間:9:00〜17:00
- 駐車台数:乗用車345台、バス16台、身障者専用6台
- 料金:無料
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