静岡県沼津港にある「沼津港深海水族館シーラカンス・ミュージアム」は、世界でも珍しい深海をテーマにした水族館です。謎とロマンに溢れた深海世界に、子どもから大人まで夢中になること間違いなしの多彩な深海生物たち。そして幻の古代魚、シーラカンスの貴重な展示!さまざまな魅力が詰まった沼津港深海水族館の特徴や見どころを紹介します。水族館とセットで遊びたいアトラクションや深海魚グルメなど、周辺の楽しみ方まで徹底調査しました。
沼津港深海水族館とは?
駿河湾の玄関口となる沼津港に、2011(平成23)年に開業した「沼津港深海水族館シーラカンス・ミュージアム(以下、沼津港深海水族館)」。創業100年を超える水産会社「佐政水産」が運営してる民営の水族館です。
館内で展示されている約100種・約2,000匹の深海魚は、7~8割が目の前の駿河湾で捕獲されたもの。深海生物は底引き網で捕獲されるのですが、通常の底引き網漁では、一度出かけると2日間港に戻って来られません。地上の環境で長生きできない深海生物の多くは、その間に死んでしまいます。
しかし、駿河湾に面した沼津港であれば、その日のうちに帰港できます。漁には飼育スタッフが同行することもあり、生きたままの深海魚を慎重に港まで運べるのです。
日本一深い駿河湾に面した沼津港で、地元漁師さんたちの協力があったからこそ実現できた、貴重な水族館といえるでしょう。
1階は水族館の展示がメイン、2階は「シーラカンスミューアジム」となっています。展示の目玉は、世界で唯一ここでしか見られないシーラカンスの冷凍標本!シーラカンスの剥製標本もあり、約3億5千年前から生き続けている深海魚シーラカンスについて詳しく紹介しています。
また、同じく佐政水産が運営する複合観光施設「港八十三番地」内にあるため、当日であれば再入場も可能。お昼は沼津のグルメを味わったり、帰りにご当地土産を選んだりと、沼津港観光と一緒に楽しめるのも魅力です。水族館の当日チケットを提示すると港八十三番地内の飲食店・お土産店では、お会計より10%引き、アトラクションは100円引きとなります。
沼津港深海水族館の利用方法
港八十三番地の門を入ると、正面が沼津港深海水族館です。
館内に入ったら、正面のチケット売り場で入場券を購入しましょう。入場料金は、大人(高校生以上)1,800円、小人(小・中学生)900円、幼児(4歳以上)400円。
沼津港深海水族館は当日に限り再入場可能です。もう一度見たい場合は、順路に沿って1階水族館エリアから2階のシーラカンスミュージアムに進み、そのまま1階から再度入場しましょう。
水族館へ再入場する場合は、出口に「再入場スタンプ」があるので、そちらを手の甲に押してから外に出るようにしましょう。
建物横にあるフォトスポットは、カップル・家族連れに人気の場所とのこと。深海のパネルを背景に、かわいいメンダコと一緒に記念写真を撮ってみては?
深海には不思議がいっぱい!ユニークな海の世界を覗いてみよう
ゲートをくぐったら、そこはもう深海の世界。まずは1階の水族館エリアを紹介します。こちらでは沼津港で水揚げされた珍しい深海生物が展示されており、時期や漁獲量によって展示の種類が変わるのが特徴。訪れるたびに展示内容が変化する飽きのこないエリアなんです。
・深海生物の特徴を見比べよう!「浅い海・深い海」
最初のコーナーは「浅い海・深い海」。浅い海と深い海に棲む、それぞれ同じ特徴を持つ生物を比較・展示しています。
深海とそれ以外では生物の構造にどのような変化が見られるのか、面白いほどよくわかりますよ。写真左は「テヅルモヅル」、右は「カワテブクロ」です。
画像提供:沼津深海水族館
ヒトデの中でも、深い海で地面近くの小さな生物を食べているテヅルモヅル。平たい体で5本の腕は細かく分かれ、蜘蛛の巣のような形をしています。
画像提供:沼津深海水族館
一方、同じヒトデでも浅い海で海藻や生物の死骸を食べているカワテブクロは、ぷっくらとしたユーモラスな形が特徴的。同じヒトデでも水圧の違いで姿が大きく変わります。
各水槽は、水圧・水温・光の加減・砂・岩まで生物の環境に合わせています。水槽内の環境を見ながら、「こんなふうに進化を遂げたのかも?」と、子どもと一緒に予想するのも楽しいですよ。ウニ・エビ・イソギンチャクなども展示されていて、常に話題が尽きません。
・あの生き物にこんな一面が?「ヘンテコ生き物」
次に訪れたのは「ヘンテコ生き物」。見た目だけじゃなく、ちょっと変わった特性を持つ生物が小さな水槽で展示されています。
ここで見逃せないのがチンアナゴ。砂から顔を出して周囲を覗く様子が大人気の生物ですよね。でも、砂の下に潜む体がこんなに長いなんて知っていました?
今まで「かわいい~!」と間近で見ていた人も、にょろにょろと動く姿にはビックリするかもしれません。そのほかにもシャコの巣穴や擬態生物など、今まで知らなかった深海の隠れた部分を学べますよ。
・おいしそうなお魚がいっぱい!「駿河湾大水槽」
「駿河湾大水槽」は、館内随一の映えスポット!水深2,500mを誇る駿河湾に生息する深海生物を中心に、さまざまな種類の魚が展示されています。今回は見られませんでしたが、巨大なタカアシガニを見るチャンスもあるのだとか。
ちなみに「深海魚っておいしいの?」と疑問に思うかもしれませんが、普段の食卓で馴染み深い金目鯛やメヒカリ、桜エビも、実は深海魚の仲間なんですよ。
大水槽では大きなアブラボウズを発見!“全身トロ”といわれるくらい脂がのっていて、食べると口の中でとろけておいしいんです。こんな顔をしていたのかと驚くはずですよ。
・海の中に星空が!「深海のプラネタリウム」
「深海のプラネタリウム」では、カーテンの中に入ると、真っ暗な空間に小さな光がたくさん揺れています。まるで蛍のように見えるのは「ヒカリキンメダイ」という深海魚。約200匹ほどが水槽の中を泳いでいます。なぜ深海魚が光るのかは、近くの解説パネルで詳しく紹介されています。
画像提供:沼津深海水族館
漆黒の海の中で魚群が光りながら乱舞している光景はとても幻想的!ぜひ、ご自分の目で感動的な光景を見てください。
・希少な生き物に出会えるかも!「深い海」
「深い海」では、駿河湾で獲れた生物を単体で展示しています。写真は底曳網漁にかかった小さな生物たち。約30cmの水槽に深海の世界が広がります。
画像提供:沼津深海水族館
人気の「メンダコ」の展示がある場合は、こちらのコーナーで見られるとのこと。夏場は底曳網漁が禁漁期となるため、それ以外の時期に捕獲されたときに展示されるそうです。展示に関しては公式サイトで案内しているので、絶対に見たい方はこまめに情報をチェックしておきましょう。
メンダコの飼育はとても難しく、また寿命も短いため、常設展示をしている水族館はありません。沼津港深海水族館では、飼育員たちの努力で、以前に52日間という最長飼育記録を達成しています。
さらに2019(令和1)年には、世界で2例目となるメンダコの孵化にも成功!当時の様子は映像展示で見られます。
メンダコに限らず深海生物を地上で育てるのはとても難しく、徐々に地上の光や食べ物に慣れさせる必要があるなど、大変な苦労があります。飼育員の努力と技術があってこそ見られる貴重な展示は、一見の価値ありですよ。
・人気の「ダイオウグソクムシ」に会いに行こう!
画像提供:沼津深海水族館
奇妙な姿で子どもを中心に人気を集めている「ダイオウグソクムシ」も、深い海のエリアで出会えます。ダンゴムシのような見た目が特徴的で、動画サイトを中心に“グソクたん”の愛称で親しまれるようになりました。「キモかわいい」の元祖ともいえる深海生物です。
ダイオウグソクムシの水槽の横には丸い窓が2つ。上が海の表面温度、下がダイオウグソクムシが生息しているマイナス5℃の深海の温度です。両方触って温度の違いを体験してみてください。たったマイナス5℃でも、全然違いますよ。
現在は展示されていない幻の魚「ラブカ」は、過去に数回展示されていた実績があります。昔は1年に1回ほどのペースで展示していたそうですが、ここ3年は捕獲されていないとか。かわいい名前とは裏腹にとても怖い顔をした、深海に棲むサメの一種。シーラカンスと同じく“生きる化石”と呼ばれています。いつの日か、また見られる日がくるかもしれませんね。
同じく“生きる化石”と呼ばれる「ヌタウナギ」も水槽でうねうねと泳いでいるので、忘れずに見ておきましょう。約5億年前から姿を変えていないそうですよ。