さまざまな遊びを提供している方々に、その体験への思いや体験の醍醐味をお聞きする【asoview!PEOPLE】。第2回目は「忍野スカイスポーツ倶楽部」で、ハンググライダー体験を開催している町田さんにインタビューしました。
■profile
町田重幸(まちだしげゆき)
山梨県にある「忍野スカイスポーツ倶楽部」でハンググライダーのプロ講師として活動している。小さい頃の夢はパイロット。高校時代に雑誌で見たハンググライダーに憧れ、卒業とともにキャリアをスタートした。沖縄で4日間のスクールに通って初級ライセンスを取得し、以後はガイドブックを頼りに独学でハンググライダーを習得する。ハンググライダーメーカーから声がかかったことをきっかけに勤めていた会社を退職し、グライダー製作やスクール運営に携わる。その後、独立して箱根でスクールを開催。忍野に拠点を移してからは20年になる。
自然で遊ぶなら、自然を知ろうとすること。
ハンググライダーは自然を相手にするスポーツなので、気候に関する知識が不可欠。だから、少しでも気候に関することを勉強して体験してもらえると嬉しいな。あらかじめ知識があると、今見てるものがより深く分かるようになるでしょ。観光地に行って、土地の歴史を知っていると見え方が違ったりするのと一緒。
何年もこの地でやっていると、ローカルの天気が分かってくる。富士吉田と山中湖はどしゃ降りでも、忍野は晴れていたりすることもあるくらい、気象状況は数キロメートル離れるだけで変わる。そういう天気の変化や、風がどの方向から吹いているか、なんで風が起きるか、なんで飛行機が飛ぶか、「南風じゃないと飛べない」って伝えてるけど、なぜ南風じゃないと飛べないのか、ってところを考えると、体験ももっと面白い。当日サクッと来てポンと飛んで楽しむ、というのももちろん良いけどね。
たとえば、せっかく来てもらっても風が悪くて飛べないってことがけっこうあるんだけど、そのときも知識があれば、「これは飛べないね」って納得できるでしょ。インストラクターは命を預かっているので、安全なラインをちゃんと理解して判断する必要がある。そういう点も含めて、気象のことを少し知っていると納得感もあるし、飛べた時の感動もひとしおなんじゃないかなぁ。
空を飛ぶことをやめられない!スカイスポーツの魅力
ハンググライダーを始めてからは来年の誕生日で40周年。バカでしょ?もう40年も飛んでるんだもん(笑)ハンググライダーを知ったのは高校のとき。雑誌で見て憧れて、卒業したらやろう!って決めていた。その当時はハンググライダーが最も盛り上がっていた頃で、大企業のロゴが大きく入ったグライダーがいくつも飛んでいた。もともとは飛行機のパイロットになりたかったけど、軽飛行機やグライダー、ハンググライダーと興味が移っていった。
「空を飛ぶスリルがいい」って勘違いされることもあるけど、僕の場合スリルは全然味わってないですね。スリルを求めて飛んでるプロは一人もいないと思う。ジェットコースターに乗れないハンググライダーのプロもいっぱいいるし。気持ちいい風の音、「飛んでる」という滑空感、自分で操っている感覚、上下左右・自由自在に飛んでいる感覚によって、高い次元でリラックスできる。大学生が昔、頭に脳波計をつけて飛ぶ実験をしていたが、飛んでいるときは脳にα派が出ていることがわかっているんです。ストレス解消にはすごくいい。
あとは不確定要素の多い遊びだから夢中になる。テイクオフしても絶対に長く飛べるわけでもないし。自然には勝てないと認識するための遊び、とも思っている。なんで飛ぶのか?と聞かれたら、自然と一体になっている感覚が好きだからかな。この40年の間にグライダー仲間がどんどんやめていったけど、俺はやめられなかった。それに、子育てや仕事が一段落してから復帰する人も多い。それだけ、他の体験には代えがたい魅力があるってことだね。
まぁでも、「なんで飛ぶんですか?どこが好きなんですか?」って言われても正直よく分からないよ(笑)飛んだ人にしか分からない。本当においしい料理を食べた時に「しつこくなくまったりしてて、香りがこんな風で…」って説明しないのと同じ。ただ「おいしい!」っていうこと。ただ空が好きだから、風
編集後記:今日は、飛べないね。
ハンググライダーの体験レポート取材をするために、「忍野スカイスポーツ倶楽部」さんに訪れたアソビュー編集部一行。その際に伺った最初のひと言が「今日は、飛べないね」でした。「お天気もよくて、ハンググライダー日和ですね!」なんてセリフを口走りそうになった矢先のこと。なぜ飛べないのだろう?どういった知識をもとにプロは飛べる、飛べないを判断しているんだろう?と気になり急遽インタビューをさせていただくことにしました。自然と遊ぶことの厳しさや、厳しいからこその達成感をゲストの方に味わってほしいという町田さんの気持ちを感じることができた取材でした。
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