「海の京都」は、京都府の日本海側に広がる観光圏。縄文時代から独自の文明が存在する場所で、和の源流が息づく場所として、近ごろ注目を集めています。この記事では、海の京都に点在する数々の見所の中でもいち、にを争う「天橋立」「伊根」というツートップをしっかり味わう日帰りルートをご提案します。
9:00am
天橋立ビューランド
京都駅から電車に乗って天橋立駅へ。さっそく、「天橋立ビューランド」向かいます。
天橋立は眺める角度(場所)によって見え方が異なるのが特徴で、主要なものは「四大観」(横一文字観、昇龍観、雪舟観、飛龍観)と呼ばれています。電車で行くなら天橋立駅に近い「天橋立ビューランド」の飛龍観、車で行くなら対岸にある「傘松公園」から見える「昇龍観」が便利です。
10:00am
天橋立桟橋から伊根へ
天橋立ビューランドから天橋立駅方向に戻り、駅の目の前にある「智恩寺」を抜けてボート乗り場へ向かいます。ちなみに智恩寺の中心にある文殊堂は、「三人寄れば文殊の知恵」の文殊菩薩に由来する由緒あるお堂。テストを受けるような年代でなくても、せっかくだからお参りを。
11:00am
伊根の舟屋群
今回の日帰り旅行で、絶対に来たかった「伊根」。美しい舟屋群の写真を見たのが伊根に興味をもったきっかけでしたが、調べるうちに〝他のどことも違う場所″だということが分かってきました。
それでは、ここでちょっとだけ伊根という土地の説明を。
丹後半島の先端で、南側に口を開けるように広がる伊根湾。南側には青島という小さな島が浮かんでいて、東西南北すべての方向からのうねりをかわします。年間を通して海はとても穏やか。ちょっとやそっとの台風ぐらいでは、波は高くなりません。海の上に建つ「舟屋=船のビルドインガレージ」が成り立つのは、まさにこの環境があるからこそ、なのです。
さて、説明はそれぐらいにして、昼食は最近できたばかりの「舟屋日和」でいただきます。
1:00pm
体験ツアーに参加
「観光客として訪れる人のほとんどは、高台にある道の駅から眺めるだけか、遊覧船で海から眺めるだけで次の目的地に向かってしまうんです」
そう教えてくれたのは、伊根体験ツアーのガイドさん。
「せっかく伊根に来たのだから、眺めるだけじゃ見えないところを見ていって下さいね!」
ツアーを通して垣間見られたのは、伊根に息づく、あまりにも豊かな暮らしでした。
「野菜は自分でつくっている」
「お米は〇〇さんに野菜と交換してもらってる」
「お魚は漁港で直接買っている」
お肉以外はほぼ自給自足。そういえば、この集落にはスーパーマーケットがありません。
驚きの連続のツアーでしたが、中でも印象に残ったのは、ガイドさんが自宅で見せてくれた“もんどり”という仕掛けです。
「アラや食べ残しをこの金籠に入れて海に沈めておきます。ひと晩経つと、魚がとれているので、そちらをいただくんです。そしてまたそのお魚のアラは、もんどりに入れて……という具合に」
まさに食材の無限ループ。どこまでも、いつまでも続く生命の連鎖がありました。
3:00pm
籠神社
バスで天橋立駅に戻りながら、「元伊勢籠神社」に立ち寄りました。「元伊勢」とは、天照大御神が伊勢神宮に祀られる前、日本各地を旅した際に一時的に鎮められた場所なのですが、実はここにはそれだけではない縁がありました。
籠神社の主祭神である彦火明命が豊受大御神を祀る場所として選んだのが、籠神社奥宮「眞奈井神社」の磐座。豊受大御神は、伊勢神宮の外宮に祀られている食の神様です。天照大御神が伊勢の内宮に鎮座する際、「丹後の豊受大御神を連れてきなさい」と指示し、豊受大御神は丹後から伊勢へと遷ったといわれています。
「伊根で感じた食の豊かさは、神話の時代から変わらないもの」
帰り道、京都という土地の歴史の長さと深さに、改めて思いを馳せます。京の都が政の中心地として、文化の中心地として栄え続けることができたのは、丹後という土地のバックアップがあったからこそなのかもしれません。
(写真・文=原 大智)
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