素朴な港町と歴史的な街並みが広がる兵庫県たつの市。沿岸部では地元産の海の幸をたっぷり堪能したり、海の美しさを感じるアクティビティが楽しめるほか、内陸部では歴史ある町並みの中でのんびりと観光を楽しめます。都会の忙しさに疲れたら、ふらりと訪れてリセットしたい。そんな町を散策してきました。
スローな時間が流れる港町「室津」を散策
最初にやってきたのは、たつの市の沿岸部に広がる小さな港町「室津」。室津は奈良時代に行基法師によって整備された港の一つで、およそ1300年の歴史を持ちます。江戸時代には参勤交代の要所となり、日本最大級の宿場町として栄た町でもあります。
三方を山に囲まれた室津の入り江はとても穏やか。ずらっと並んだ漁船を眺めながら、静かな港を散歩してみると、潮風とかすかな波の音だけを感じるスローなひとときを過ごせます。
港から一本奥の道に入ると、歴史情緒を感じさせてくれる室津の街並みが広がっていました。江戸時代には参勤交代の大名が宿泊する本陣が6軒もあったんだとか。「室津千軒」という当時の呼び名からも、その活況ぶりが垣間見れます。現在、本陣は一つも残っていないですが、廻船問屋として活躍した豪商「嶋屋」を改装した「室津海駅館」や豪商「魚屋」を改装した「室津民族館」などで当時の暮らしを垣間見ることができます。
室津の散歩道を進むと、国の重要文化財に指定されている「賀茂神社」にたどり着きます。神社までの長い石段を登り、昇ってきた道を振り返ると美しい港町が眼下に。石段を登るのはちょっと大変ですが、登り切ると感動的な景色が見られます。
石段を登り切ると賀茂神社の本殿が現れます。賀茂神社は、この本殿を含む合計8棟の建物が国の重要文化財に指定されています。別名は室明神社とも呼ばれており、平安時代には賀茂別雷神社の直系御厨の地にもなりました。江戸参府時にこの地を訪れたシーボルトが絶賛したと言われる、参籠所(さんろうしょ)から一望する播磨灘の絶景は必見です。(※2020年3月17日時点で修繕工事中です)
賀茂神社から歩いてすぐの場所には浄運寺というお寺も。高台に位置し、門越しに一望する播磨灘は、門を額縁に見立てた美しい絵画のよう。時折吹く潮風と陽の光に照らされてキラキラと輝く海の景色が、静かで気持ちのいいひと時を与えてくれます。また浄運時は法然上人霊跡の一つにも数えられ、遊女の元祖といわれる「友君」や近松作の恋物語「お夏清十郎」のゆかりの地としても知られます。
潮風と絶景を楽しむ!絶品海鮮BBQでランチ
室津を散策したら室津港からすぐ近くにある「道の駅みつ」でランチを。道の駅みつは、2010年2月にオープンした施設で今年10周年を迎えたばかり。館内では室津の名産でもある牡蠣や穴子といった新鮮な海鮮グルメが楽しめるだけでなく、地元産の食材を安価で購入できることから人気を集めています。
今回頂いたのは「海鮮BBQセット(一人前2,200円/税込)」。室津産の新鮮な海の幸を炭火で焼いて堪能できる贅沢なコースです。セット内容は牡蠣・穴子・海老・干物・旬魚/切り身・その他、ウインナー・野菜3種とボリュームもたっぷり!海鮮メニューは季節に応じた旬のものを頂けるので、何度訪れても楽しめます。さらに、もっと牡蠣を堪能したいという方は「牡蠣食べ放題(大人3,600円 / 子供2,000円)もオススメ。
海鮮BBQは、寒い日は「牡蠣小屋」で、天気のいい日は「瀬戸内うみかぜBBQテラス」で楽しめます。この日は天気がよかったので瀬戸内うみかぜBBQテラスで海鮮BBQを堪能。潮風を感じ、透き通る海を一望しながらのBBQはとても気持ちよく、お食事もより一層美味しく感じられます。
特に室津産の牡蠣は身が大きくて絶品!いくらでも食べられてしまいそうです。また道の駅みつで人気の穴子も身がフカフカで美味。
食事の後は敷地内に広がるプライベートビーチのような砂浜でちょっと休憩。砂浜ではしゃぐ親子の賑やかな声や暖かな日差しが穏やかでスローなひと時を感じさせてくれます。
歴史情緒溢れる町並みを歩く。城下町・龍野を散策
ランチの後は室津を離れ龍野へ移動。龍野は播磨の小京都とも呼ばれ、歴史情緒あふれる閑静な城下町です。
武家屋敷や町家が今もなお多く残る城下町地区は、どこを歩いてみても絵になる場所ばかり。歴史情緒を感じながらのんびりとした時間の中で町歩きを楽しめます。
町歩きで少し疲れたら「クラテラスたつの」で少し休憩。龍野は「うすくち醤油」発祥の地でもあり、この建物も大正時代から使われてきた醤油蔵を改装したもの。すぐ隣には龍野の歴史的景観の象徴でもある「醤油の郷 大正ロマン館」もあり、そちらの観光も合わせて楽しめます。
クラテラスたつのでは、地元産の食材を使ったさまざまなカフェメニューを提供。今回は、たつの市御津町で収穫される人参を使ったジュース「mitsu MORNING CARROT(ミツモーニングキャロット)」をいただきました。さらに、“うすくち醤油発祥の町”らしい醤油味のジェラートとさくらのジェラートをおともに。さくらのジェラートは春限定のフレーバーですが、たつの市の市花がさくらということもあり、春にこの地を訪れたらぜひ味わっていただきたい一品です。
ポカポカとした日差しが気持ちのいいテラス席は、のんびり過ごせるだけでなくフォトジェニックでもあります。ミツモーニングキャロットは甘味料などが使用されておらず、素材そのままの素朴な甘みを感じられるさっぱりとした口当たり。醤油のジェラートは塩キャラメルのような味わいでクセになりそう。さくらのジェラートはさっぱりとした甘みとさくらのいい香りが特徴的でした。
クラテラスたつのの中には地元の名産品であるお醤油や揖保乃糸などを中心に販売。グレードの高い揖保乃糸や揖保乃糸パスタなど、あまりお店では見かけない商品も並んでおりお土産にもぴったり。
クラテラスでひと休みした後は「龍野城」へ。龍野城は寛文12年(1672年)に藩主脇坂安政公によって築城されました。もともとは石垣のみが残っていましたが、現在は本丸御殿や城壁、多聞櫓、埋門、隅櫓などが復元されており、復元とは思えない見事な木造復元を見られます。
龍野城のすぐ近くには、たつの市出身の詩人、童謡作家、歌人、随筆家として知られる三木露風の生家も。三木露風といえば童謡「赤とんぼ」が有名。誰もが一度は口ずさんだことがあるのではないでしょうか。
家の中には、三木露風の軌跡を辿ることのできる様々な資料を展示。露風直筆の詩など貴重な資料が見られます。日本を代表する童謡作家の生い立ちに触れてみてはいかがでしょうか。
「そうめんの里」で伝統産業「揖保乃糸」の技にふれる!
「手延べそうめん」のブランドとして全国的に有名な「揖保乃糸」。実はたつの市の伝統産業なんです。龍野の城下町から車で10分程の場所には、そんな揖保乃糸の伝統の技と味わいを体験できる施設「揖保乃糸資料館 そうめんの里」があります。
館内ではそうめん作りの工程を間近で見学できるイベントも開催。職人さんの手であっという間に、そうめん生地が絹糸のように細く長くなっていく様子に驚かされます。
完成したそうめんは近くで触れることもできます。実際に触ってみるとサラサラで弾力があり、本当に糸みたい!ちょっと感動です。
そうめんの里の2階には揖保乃糸の歴史を様々な展示資料で学ぶことのできる「そうめんの里資料館」があります。そうめんの里自体は入館無料ですが、資料館へは大人300円、中・高校生200円、小人100円の入館料が別途必要です。
館内に展示されている人形から、そうめんが作られ始めた当時の作り方などがわかります。普段何気なく食べているそうめんも、こんな歴史があったんだ!と発見がたくさん。
そうめんの製造工程を実際に体験できるスポットも!職人さんが軽々やっていた作業も、実際にやってみるとかなり難しく、職人さんのすごさを改めて感じさせられます。ほかにも工場見学やクイズなども楽しめるので、子どもと一緒に訪れて学びながら楽しく遊べるもポイントです。
無人島ツアーで誰にも邪魔されない静かな海を満喫。
たつの市に一泊して観光とアクティビティを楽しむなら、室津港の近くで開催されているカヤックツアーがおすすめ。なんとこのツアー、カヤックを自分で漕いで無人島に上陸するというちょっとした冒険が味わえるツアーなんです。
ツアーをガイドしてくれるのは「アクロス瀬戸内カヌースクール」の阪井さん。初めての方でもカヤックの乗り方や扱い方を一から丁寧に教えてくれるので安心して冒険を楽しめます。
海にカヤックを漕ぎ出してみると、陸からは見ることのできない切り立った岩肌などダイナミックな景色が間近に!
沖まで出ると波と風の音だけが聞こえる静かな世界。時折通り過ぎる船のエンジン音と暖かな日差しがさらにのんびりとした時間を感じさせてくれます。
無人島までは片道約3㎞。のんびりとカヤックを漕いでいたらいつの間にかすぐ近くまで来ていました。
上陸して少し浜辺をお散歩します。自分たち以外誰もいない無人島を独り占めできるのはちょっと特別な体験。
海が綺麗なので腰掛けて眺めているだけでも気持ちのいいひと時です。好きな音楽を流しながら友人や家族との会話に花を咲かすのもいいでしょう。夏場であれば自分で釣竿を持ち込んで釣りを楽しんだり、海で泳いだりと自由な時間を過ごすことができます。
無人島上陸ツアーはランチ付きなのも嬉しいポイント。海遊びをして冷えた体に嬉しいスープパスタをその場で調理していただきます。
阪井さん特製のスープパスタが完成!トマトベースにコンソメが効いていて美味しい!そして何より温まります。ツアーで提供するアウトドアランチは基本的にこのスープパスタなんだとか。
思いっきり遊んだ後に自然のなかで食べるご飯は最高。自然と笑みがこぼれます。
たつの市観光と合わせて楽しみたい!そのほか周辺のスポット
たつの市の周辺には、ほかにも様々な観光スポットがあります。季節の花々を楽しんだり、その土地ならではのグルメを堪能したりと、たつの市観光に訪れた際に合わせておすすめのスポットをご紹介します。
【宍粟市】兵庫県立 国見の森公園
標高高低差約300m、延長1,100mのコースをのんびりと登るミニモノレールが人気の「兵庫県立 国見の森公園」。広大な公園内には、名前の通り6種類の「森」があり、四季折々の自然を楽しんだり、思いっきり体を動かして遊んだりできます。学習施設も充実しているので、子どもとのおでかけにもピッタリです。
【宍粟市】老松酒造
宍粟市は日本酒発祥の地として知られる町。町の周囲は山に囲まれ、山から湧き出る豊富な水と良質な米に恵まれた環境で作られる日本酒は絶品です。「老松酒造」では、酒蔵や酒造りの道具の展示を通して、宍粟の日本酒の歴史を垣間見ることができます。
【佐用町】兵庫県立大学 西はりま天文台
日本国内最大、公開望遠鏡としては世界最大を誇る「なゆた望遠鏡」を有する天文台。ほかにも太陽を観測できる特殊な「太陽モニター望遠鏡」や昼間の一等星観測もできる「60cm望遠鏡」など様々な望遠鏡を完備。夜間天体観測会をはじめ、昼間の星と太陽の観察会などが開催されているので、豊かな自然の中で星空に想いを馳せながら過ごしてみるのもいいでしょう。
【佐用町】ホルモンうどん
佐用町の名物「ホルモンうどん」。約70年前に佐用町で生まれたとされていて、鉄板でホルモン、野菜、うどんを焼いて、お店ごとに特徴の異なるつけダレでいただくちょっと変わったご当地グルメです。佐用町には様々なホルモンうどんのお店が点在しているので、訪れた際はぜひ食べ比べなども楽しんでみては。
【上郡町】かみごおりさくら園
河津桜をはじめ、10種類約1,000本の桜が美しい花を咲かす「かみごおりさくら園」。春だけでなく、10月には年に2回花を咲かせる「十月桜」といった珍しい桜も楽しめます。
【上郡町】萬勝院
通常「ボタン寺」として親しまれている「萬勝院」。行基菩薩によって創建されたと伝えられており、寺院内には約100品種2,000株のボタンが植えられています。毎年5月上旬ごろには見頃を迎え、色とりどりのボタンに彩られた美しい風景を楽しめます。
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