数々の企業の創設に関わったことで「近代日本経済の父」ともいわれる渋沢栄一翁。2024年7月に発行される新一万円札の肖像に選ばれ、いま再び注目を集めています。
今回は、渋沢栄一翁の出身地・埼玉県でゆかりのある体験やスポットを紹介します。ぜひお出かけの参考にしてみてください。
渋沢栄一翁について
2024年7月から新一万円札の顔となる渋沢栄一は、江戸時代末期にあたる天保11年(1840年)、現在の埼玉県深谷市に誕生。幼い頃から家業である藍玉の製造・販売、養蚕を手伝い、商人としての心得を自然と身につけたといいます。大人になってからはその商才を徐々に発揮し、明治政府に招かれて国づくりに関わったのちに大蔵省を退官して実業界に入りました。
渋沢栄一翁は実業家として第一国立銀行の総監役(のちに頭取)となった他にも、王子製紙、大阪紡績(現:東洋紡)、東京瓦斯(現:東京ガス)などを含む約500もの企業の創設に関わり、近代日本経済の父と称されるほどの数々の偉業を成し遂げました。また経済活動のみならず公共事業や教育、事前活動にも尽力し、約600の社会公共事業・教育機関の支援を行なったのだそう。91歳でこの世を去るまで生涯現役で精力的に活動し、彼の生き方や考え方は今も多くの人に多大なる影響を与え続けています。
渋沢栄一翁を育てた「埼玉県深谷市」の歴史と文化
渋沢栄一翁の出身地、埼玉県深谷市は埼玉北部に位置する人口14万人ほどの都市です。その歴史は古く、1456年に上杉房顕(うえすぎ ふさあき)が深谷城を築き、周辺に城下町が形成されたのが深谷市街地の始まりとされています。時を経て江戸時代には中山道の宿場が置かれ、一時期は旅籠が約80軒並ぶなどのにぎわいをみせ、宿場街としても発展しました。
現在の深谷市は農業が盛んに行われており、特に生産量全国トップクラスを誇るねぎをはじめとして、ほうれん草やブロッコリーなどが多く栽培されています。また、2018年秩父鉄道に「ふかや花園駅」が新設され、2022年には大型商業施設が開業し、盛り上がりを見せています。
渋沢栄一翁の軌跡を辿る体験をご紹介
百聞は一見にしかずです! ここからは、渋沢栄一にゆかりのあるスポットや体験をご紹介。近代経済を支えた偉人がどのような場所で育ち、何を見て、何を感じたのか、ご自分の目で確かめてみましょう!
1.気持ちまで武士になりきる!本気のコスプレ「BLAPPER」
そんじゃそこらのコスプレではありません! 長瀞より少し下流にある寄居町で体験できるのは、本物の甲冑を身につけて武士気分を味わいながら街を散策して、河原で模擬合戦までやってしまうという“本気のコスプレ”!
舞台となる寄居町は渋沢栄一翁のゆかりの地ですが、実業家として知られる渋沢翁もかつては尊王攘夷思想に傾倒し、「武士」として日本を変えようと剣術を鍛錬したと言われています。そのような渋沢翁の心意気を深く知るために、体験では甲冑を着るだけではなく武士の生活や文化をガイドの熱いトークによって学ぶこともできるので、時代背景や歴史をふまえて心身ともに「武士」になりきることができます。
想像以上に重い鎧や兜を身につけ、槍や刀などを手にすると、あらためて武士として生きることの重みを感じるはず。日常では決して知ることのない武士気分をぜひ味わってみませんか?
2.渋沢栄一翁も愛したモカコーヒーの焙煎体験「長瀞珈琲焙煎室」
埼玉屈指の景勝地、長瀞ではアウトドアアクティビティが定番ですが、ちょっと趣向を変えてコーヒー豆の焙煎体験などはいかがでしょう。
秩父鉄道「長瀞」駅から徒歩4分、小さな焙煎室「長瀞珈琲焙煎室」では、生豆からコーヒーを焙煎するユニークなワークショップを開催しています。まだ淡い緑色をした生豆が焙煎によって徐々に茶色くなっていく過程は、まるで理科の実験をしているよう。「専門知識はいるの?」と思うかもしれませんが、そこはご安心ください。焙煎前にはコーヒー豆や焙煎機についてのレクチャーがあるので、15歳以上であれば誰でも気軽に参加することができます。
実業家として海外へ行き、コーヒーを飲む機会も多かった渋沢栄一翁のお気に入りはモカコーヒーだったそうで、ワークショプで使用する豆もモカコーヒーとなっています。体験後はお土産として「自分で焙煎したコーヒー豆」と「店頭のお好きなコーヒー豆100g」を持ち帰ることができるので、ご自宅でも体験の余韻をゆったりと味わってください!
3.若返りに期待!セルフエクササイズを学ぼう「尾高リハビリ事務所」
渋沢栄一翁がその生涯を閉じたのは91歳。晩年も精力的に社会活動を続け、まさに“生涯現役”と呼ぶに相応しい人生を送ることができたのは、渋沢翁が健康にも人一倍気をつけていたからと言われています。特に好んで実践していたのは「坂本屈伸道(さかもとくっしんどう)」という若返り健康法。背骨とお腹を柔らかく動かすことで内臓の機能を高め、同時に脳を休めるという全身に効果の高い健康法ですが、これが埼玉県深谷市で誰でも気軽に体験できるのです!
「尾高リハビリ事務所」が主催するセルフエクササイズ体験では、プロの指導のもと坂本屈伸道を実践して心と体と呼吸を整えます。座ったままの姿勢で無理のない範囲で行うので、日頃運動をしていない人も気軽に参加できるのも魅力。エクササイズは日常生活でも取り入れることができるので、家に帰ってからも続けられるように体験の中でしっかりと覚えてしまいましょう!
4.14種の豆の中から選んで焙煎体験「焙煎直火焙煎珈琲 まめや 深谷館」
渋沢栄一翁の生まれ故郷でもある埼玉県深谷市にある「直火焙煎珈琲 まめや 深谷館」は、オーダーを受けてから珈琲豆を焙煎して一杯一杯提供するこだわりの喫茶店です。
このコーヒー愛に溢れるお店では、14種の豆の中からご自身で選んだ豆を焙煎してオリジナル珈琲豆を作るというユニークな体験を実施しています。珈琲豆作りを通して豆の違いや香りの豊かさなどに触れると、あらためてコーヒーの世界の奥深さに感動するはずです。オプションとして焙煎した豆をオーナーがドリップしてその場で飲むこともできますが、体験で作った豆はご自宅に持ち帰ってお楽しみいただけます。
渋沢栄一翁もかつてヨーロッパを訪れた際にコーヒーを嗜んでいたそうなので、ご自身で焙煎したコーヒーをご自宅で飲む際には、古の偉人に思いを馳せてしみじみと味わってみては?
5.手持ちの服が美しい黒染めで蘇る!「株式会社きぬのいえ」の染色体験
名水の町として知られる埼玉県寄居町にて37年間続く老舗の染物会社「きぬのいえ」では、染色の楽しさを伝えつつ、汚れて着られなくなった服を染め直して再生させようというSDGsの考えから、自社の工房にて染色体験を実施しています。
体験は1グループ最大6人までの貸切り。経験豊富な染色職人がつきっきりで丁寧に教えてくれるので、初めての人でも安心して参加できます。染めるものはご自身の衣類となりますが、1人1kgまで持ち込むことができるので、「少し古くなってきたけれど、まだまだ着たい」というようなお気に入りのTシャツなどをご自由に組み合わせてお持ちいただけます。体験時間はたっぷりと3時間程度。染め終わった衣類は乾燥していない状態でビニールに入れて持ち帰るか、乾いた後に配送をお願いすることもできます(別途配送料)。
純粋な好奇心から、あるいはSDGsのアクションとして、まずはご自身の衣類を染色によって再生させてみませんか。
6.埼玉県最古の企業を見学できるツアー「有限会社 戸谷八商店」
桶狭間の戦いのあった1560年創業、埼玉県最古の企業である陶磁器商「戸谷八商店」では、本庄の建築探訪をしながら渋沢栄一翁の経営精神を学べる文化的なツアーを開催しています。
渋沢栄一翁との関係も深い戸谷八商店ならではの奥深い歴史解釈を、15代当主自らのガイドによって聞くことができるというぜいたくな体験は、教科書で歴史を学ぶよりも深く心に刻まれるはず。内容が内容だけにお堅いツアーをイメージしてしまいますが、当日は長持(ながもち)や背負い箱を担いでの写真撮影ができるなど、エンターテイメントとしての要素もきちんと兼ね備えています。
JR「本庄」駅から徒歩7分、駐車場も4台分完備されているので手ぶらでお気軽にご参加ください!
7.レジンを使ったオリジナルアクセサリーで思い出を残そう「UPDRAFT」
秩父鉄道「長瀞」駅から徒歩1分、約1,000平方メートルという広大な敷地をもつ「UPDRAFT」は、レンタルスペースとセンスの良いセレクトショップ、そして屋外イベントに最適な庭が併設された盛りだくさんな複合施設です。
このワクワクするような空間で体験できるのはレジンアクセサリー作り。レジン(樹脂)は中にお花を閉じ込めたり着色したりと自在に加工できるフレンドリーな素材なので、はじめての方でも気軽に楽しむことができます。制作するのはキーホルダー、ネックレス、ヘアゴム、ストラップの中から2点になり、完成したアクセサリーは当日お持ち帰りできます。
旅の思い出を閉じ込めて自分へのお土産にするのもよし、誰かへのプレゼントにするもよし。自由に色やデザインを考えて思いっきりアートな気分を楽しみましょう!
渋沢栄一翁の足跡を辿って、お出かけしてみませんか?
本記事では「渋沢栄一」をテーマに体験やスポットを紹介しました。1人の人物にスポットライトを当て、ゆかりのある場所を巡るだけでも歴史や自然、食、SDGs、など、学べることはさまざまです。
埼玉県深谷市周辺には、このほかにも魅力ある体験やスポットが盛りだくさん。ぜひこの機会に足を運んでみてくださいね。
<文=東口知枝、編集=林創>
※掲載されている情報は公開日のもので、最新の情報とは限りません。最新情報は必ず公式サイトでご確認ください。
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