東京・上野公園の国立西洋美術館では、2025年2月11日まで「モネ 睡蓮のとき」が開催中です。日本初公開の作品7点を含む約50点もの作品がパリのマルモッタン・モネ美術館より来日。さらに国内に所蔵される名画も加え、日本では過去最大規模の<睡蓮>が集う貴重な機会で、秋の芸術鑑賞デビューにはぴったり!そこで今回は、普段絵画にふれる機会が少ない人でも作品を楽しめるよう、見どころのポイントを紹介します。
モネ晩年の挑戦に焦点を当てた「モネ 睡蓮のとき」
「モネ 睡蓮のとき」は画家クロード・モネ(1840年〜1926年)の代表作<睡蓮>20点以上が集結する、晩年の制作に焦点を絞った究極のモネ展。世界最大級のモネコレクションを所蔵するフランス・パリの「マルモッタン・モネ美術館」より日本初公開の7点など重要作を含む約50点が来日。モネが多くの時間を過ごした「モネの庭」と呼ばれる庭園を散歩するかのような“光と色彩を感じる”鑑賞体験が叶います。会場は、ル・コルビュジエが本館の設計を手がけ、世界文化遺産に登録されている「国立西洋美術館」です。
クロード・モネとは?
クロード・モネは、印象派を代表する画家のひとりで、生涯に渡り光や水の表現を追い求めました。時間の経過により移り変わる景色、そして太陽の光によりさまざまな表情を見せる水とその反映を描き続け、特に<睡蓮>とその池を描いた作品は、300枚にも及ぶとされています。
彼は同じモチーフを季節や時間を変えて描く“連作”の手法を確立し、何枚ものカンヴァスを立てかけ光が変わるごとにその微妙な変化を捉えていました。また日本美術を愛し、多くの浮世絵コレクションを所有、モネ自身の作品にも影響が垣間見れます。
印象派をわかりやすく解説!
「印象派」とは19世紀後半にパリで起こった芸術運動のひとつ。その起源は、モネが描いた《印象、日の出》(1872年)と言われています。主に都市風景や日常生活、自然の景色など身近なものを題材とし、細部描写や滑らかな仕上げにこだわらず見たままの色彩と自由なタッチで描いた画家がちが印象派と呼ばれました。屋外での制作を好み、パレットの上で絵の具を混ぜるのではなく、カンヴァスに細かく色を置いていく技法・筆触分割が特徴。赤と緑に黄に紫など補色を組み合わせた鮮やかな色彩表現もポイントのひとつです。
鑑賞前に知っておくと、より楽しめる予備知識
作者や作品・時代背景を知ることで鑑賞がより充実のある時間に。今回は「モネ 睡蓮のとき」鑑賞時に押さえておきたいキーワードをご紹介しましょう。
キーワード①「ジヴェルニーの家」
モネが43歳から86歳で亡くなるまで過ごした場所でアトリエ兼自宅、そして20年にもわたり庭師と造り上げた「モネの庭(水の庭・花の庭)」があります。特に「水の庭」では<睡蓮>をはじめ多くの作品が描かれました。
キーワード②「水の反映」
モネは、自身でも「水の反映に取りつかれた」と語るほど。“水の反映にこそモチーフの本質がある”を頭の片隅に入れつつ、睡蓮・柳の影・雲の影に注目して鑑賞してみましょう。
キーワード③「光」
連作では、同一の場所でも時間の経過による光の変化が顕著に見られるもの。描かれた季節に時間、どこから光が来るのか、モネが筆を執り描いた瞬間を想像してみてください。
キーワード④「大装飾画」
《アガパンサス》(1914-1917年頃)や《藤》(1919-1920年頃)をはじめ巨大な作品群はモネが長い間温め続け、晩年の心を占めたプロジェクト「大装飾画」のための作品。巨大なパネルが楕円形の部屋の壁面を覆い尽くす構想は、フランス・パリのオランジュリー美術館の「睡蓮の間」へとつながります。
「モネ 睡蓮のとき」の展示内容
本展は「第1章 セーヌ河から睡蓮の池へ」「第2章 水と花々の装飾」「第3章 大装飾画への道」「第4章 交響する色彩」に「エピローグ さかさまの世界」で構成。代表作<睡蓮>が誕生する過程に、戦争や家族死のなど困難を極めたモネの晩年の想いが色彩とともに渦巻く作品までを年代順にじっくりと目に焼き付けることができます。
本展のハイライトは「第3章 大装飾画への道」。鑑賞者を囲むように9点の<睡蓮>が展示され、中央に立つとまるで「水の庭」に佇むかのような感覚になれます。「第4章 交響する色彩」では白内障の影響で赤みがかった作品たちが並び、その色彩とタッチで見るものを圧倒します。また、「第2章 水と花々の装飾」では巨大な作品たちが「モネの庭」に咲き誇った花々の美しさを時を超えて教えてくれますよ。
どうやって観たらいいの?今すぐできるモネ作品鑑賞方法をご紹介!
まずは、「モネの庭」を訪問し、ゆったり散歩するような気分になってみましょう。木漏れ日に咲く花々、揺れる水面に反映を天気の良い日に愛でるようにリラックス。また、制作中のモネ自身の気分になってみても楽しいかも!?
続いては、気になった作品を近くで眺めてみてはいかが? 絵の具の盛り上がりに色の置き方、伸びやかなストロークやタッチにもご注目を。
今度は少し離れてみましょう。すると、置かれた色たちが絶妙に混じり合いモチーフが浮かび上がってきます。特に「第4章 交響する色彩」では、燃えるような色彩の奥に突如“日本の橋”や“ばらの小道”などが目の前に現れます。
さらに“モネがどのような気持ちで描いたのか”を想像してみましょう。創作意欲にあふれる瞬間、白内障を患い色が見えにくくなったときや愛する家族の死、「自分だったら?」と気持ちを重ねることで気づけることもあるはず。
また、時代背景も一緒に考えるとより作品を深掘りできます。第一次世界大戦に向き合いながらモネが描いた枝垂れ柳は、涙を流すような姿から人々の悲しみを象徴するモチーフでした。小学校高学年〜中学生は美術館が配布する「ジュニア・パスポート」の活用もぜひ! そして「またあの作品を観たい!」と感じたら会場を再度巡ってみてくださいね。
“五感でひたる”グッズたち。食べて、使ってモネを感じて
「モネ 睡蓮のとき」特設ショップでは“五感でひたるモネ”をコンセプトに、限定グッズを展開中。“香りでひたる”「ハンド&ネイルクリーム」(3,300円/税込)に“食べてひたる”「ヴォヤージュサブレ」(2,300円/税込)まで勢揃い。作品鑑賞を追体験できる「図録」(3,200円/税込)も発売中です。
庭に招待されたかのような感覚と晩年作品の色使いで新たなる“モネ”に出会う!
モネが描いた景色の中へ入ったかのような没入感を味わえる本展。まるで、「モネの庭」に招待されたかのような時間が過ごせます。描かれた景色はどれも広がりを感じさせ、思わず続きがあるかと額縁の外を確認してしまうほど。
全64作品を眺めたあとは、モネがいずれの時代も情熱を持って作品制作に打ち込んでいたことがわかるはず。最初期の<睡蓮>から最晩年の<睡蓮>まで一気に辿ることで、今までの印象を覆す“モネ”と出会えます。ひとりで堪能するのもよし、大切な人と一緒に訪れ感想を言い合うのもよし。それぞれの“モネ”をとらえに、ぜひ何度も足を運んでみてはいかがでしょうか。
<文=相川真由美>
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