いよいよ浅草寺「本堂」へ!
圧倒的な存在感を放つ本堂正面には、直径4.5mの大提灯が掛かります。雷門よりも大きな提灯で、近くで見るとかなり迫力がありました。階段を上ると、どんな世界が待っているのでしょうか。
本堂の中に入ると、天井まで約10mの開放的な空間が広がっていました。天井中央に描かれた「龍之図」(川端龍子画)と、その左右にある「天人之図」(堂本印象画)の天井絵が素晴らしいので、ぜひお堂中央部だけではなく天井部も見上げてみてください。
約19畳分の天井絵および本堂は、残念ながら撮影禁止。ぜひ足を運んで、自分の目で見てください。江戸時代の参拝者は天井を見上げて天人にも祈願していたそうですが、その気持ちがわかる見事な天井絵でした。
ちなみに浅草寺本堂ご本尊は、「秘仏中の秘仏」といわれています。本堂には、本来あるはずのご本尊の姿はありません。その理由は大化元年(645年)に遡ります。
勝海上人というお坊さんが浅草寺に立ち寄り、観音堂を修造しました。ある夜、上人の夢に観音さまが現れて「みだりに拝するなかれ」と告げられたそうです。以来、本尊は「厨子御宮殿(ずしごくうでん)」の奥深くに、秘仏として奉安されています。絶対秘仏となっているため、たとえ僧侶であっても姿を拝することはできません。
12月13日の御宮殿開扉法要のときに限り、一般の信徒も見られるのですが、それは本堂のご本尊ではなく「御前立本尊」。
御前立本尊様は浅草寺の中興とされる慈覚大師円仁が作ったとされる像です。浅草寺によると「歴史もありとても大事にお守りしているお像です。どのお像でも優劣はなく大切にお祀りしております」とのこと。お寺からも大切にされ、多くの人から親しまれている仏像なのですね。
昼間も美しい浅草寺ですが、夜にはまた別の表情を見せてくれます。日没から23:00まで毎日、本堂・五重塔・宝蔵門・雷門がライトアップされるので、足を運んでみても楽しそうですね。昼間とは違う幻想的な世界に浸れますよ。
ちなみに浅草寺のお参りの作法は、お賽銭を入れ、合掌して一礼、さらに軽く一礼となります。山門から出る際は、本堂に向かって合掌一礼をしましょう。参拝の作法は覚えるのが大変かもしれませんが、知っておくと安心です。
参拝後は影向堂で御朱印をいただこう
神社仏閣巡りが好きな人にとって、御朱印集めは大切な楽しみのひとつです。浅草寺の御朱印は、本堂の北西方向にある影向堂でいただけます。
御朱印はご本尊と大国天の2種類(各500円)。今回は「聖観世音菩薩」と書かれた、ご本尊の御朱印をいただきました。
ちなみに影向堂は、聖観世音菩薩を中心に、その左右に十二支守り本尊の八躰の仏様が奉られているお堂です。入って左手には、福々しい「大国天」の姿も拝めます。
外から眺めても美しい影向堂ですが、気になるのが屋根上で存在感を示す角のような金色の物体。これは金箔押しの「鴟尾(しび)」と呼ばれるもので、火伏せのまじないといわれているそう。しかもこちらの鴟尾には、雨を呼ぶ不思議な力があるようなんです。
鴟尾を取り付ける際にはなぜか雨が降り、平成6年の記録的な日照りのときにも、鴟尾を取り付けたとたんに突如として恵みの雨が降ったのだとか!
そんな神秘的な鴟尾のある影向堂の周辺では、阿弥陀如来像、聖観世音菩薩像、子育・商徳・出世地蔵尊など、さまざまな仏様やお地蔵様が拝めます。池や小さな石橋がある庭園のような見た目も趣があり、散策がてら楽しめるスポットです。
自然を感じながら歩いていると、お堂に書かれた「三峯神社」の文字に、思わず二度見してしまいました。秩父で有名なパワースポット「三峯神社」が、なんと浅草寺にあったのです。
その昔、境内各所にはさまざまな神社が勧請され、浅草寺敷地内に建てられた歴史があります。秩父まで行かなくても参拝できるなんてうれしいですね。
見どころがいっぱいの浅草寺
広大な敷地を誇る浅草寺には、本堂や影向堂以外にも注目のスポットがたくさんあります。参拝後は境内をのんびりと巡ってみるのも楽しいですよ。ここからは、境内にある名所スポットを一挙に紹介します。
・「凶」が多いって本当?浅草寺の「おみくじ」
参拝後は本堂近くに戻ってお守りやおみくじを見てみましょう。浅草寺のおみくじ(100円)は「凶が多い」という噂があり、運試しに訪れる方も多くいるのだとか。試しに引いてみましたが、結果は「小吉」でした。
浅草寺の談話によると、多くの神社仏閣が70対30の比率で吉凶を配分していたのですが、凶が多いとおみくじが引かれなくなることから、徐々に配分を変えていったそうです。浅草寺だけは未だに配分を変えていないことから、凶が多く出ると信じられています。
・浅草寺にゆかりのある童謡「鳩ポッポ」の歌碑
子どもの頃に歌った記憶のある童謡『鳩ポッポ』。その歌碑が浅草寺にあります。作詞家である東くめさんが、浅草寺境内で鳩と戯れている子どもの姿を見て『鳩ポッポ』の歌詞が生まれたことに由来し、歌碑が建てられました。
訪れた日は葉が茂って歌碑が見えにくくなっていますが、歌碑の上には鳩の像があります。たまに像に混じって本物の鳩がとまりにくるのだとか。見ているだけで癒やされるスポットです。
・空に映える美しい「五重塔」
浅草寺にある五重塔。こちらは昭和48年(1973年)に再建された、鉄骨・鉄筋コンクリート造りの塔です。スリランカのイスルムニヤ寺院から伝来した釈迦の遺骨「仏舎利(ぶっしゃり)」が、最上層に納められています。塔の高さが地上53.32mもあるため、浅草寺境内の各所からその姿を見られます。
手前に見える「平和の時計」は、かつて大空襲があった浅草寺周辺の平和を祈るために建てられたもの。五重塔を模したようなデザインになっていて、こちらも見どころです。
・胎内くぐりで厄除けできる「淡島堂」
本尊の阿弥陀如来像、淡島明神像などが安置されている淡島堂は、女人守護のお堂です。淡島明神という俗称があり、江戸時代には淡島明神の信仰を説く「淡島の願人」と呼ばれた人がいたそうですよ。
淡島堂の堂前に、変わった石灯籠を発見。下部がくぐり抜けられるようになっています。こちらは「胎内くぐりの灯籠」として江戸時代から有名な場所。子どもが通ると、虫封じや疱瘡除けのご利益があるのだとか。親子で訪れたらぜひ立ち寄っておきたいスポットです。
・商売繁盛にご利益がある「銭塚地蔵堂」
淡島堂よりもさらに奥にある「銭塚地蔵堂」。兵庫県西宮市山口町に残る銭塚地蔵尊の分霊を勧請したお堂です。堂内に安置されている六地蔵尊はとても穏やかな表情をしていて、心があたたかくなりました。商売繁盛のご利益を求めて祈願する人が多い場所だけあり、明るく気持ちのいい空間が広がっています。
敷地内には「カンカン地蔵」があります。もとは大日如来像として伝わった像ですが、現在はカンカン地蔵と呼ばれ、顔などの原型をとどめていない像となっています。元の姿は想像しにくいものの、確かなパワーを感じられる地蔵尊です。
塩を奉納し、石像の前にある黒い石で像を打ちながら祈願すると、財福のご利益があるといわれています。石で打つと「カンカン」と金属音がするため、このような名称になったそう。
実際に打ってみたところ、打つ場所によって音や感触の違いがありました。
・国の重要文化財に指定されている「二天門」
本堂の東側に建つ「二天門」は、慶安2年(1649年)につくられた朱塗りの門。国の重要文化財に指定されています。すぐに本堂に向かいたい場合は、こちらから訪れるといいでしょう。
・関東の三弁天のひとつ「弁天堂」
「弁天堂」に祀られている弁財天は、七福神のなかで唯一の女神です。神奈川県藤沢市の江ノ島弁天と、千葉県柏市の布施弁天に並ぶ「関東の三弁天」として有名。毎朝6:00に鳴る鐘や除夜の鐘は、弁天堂前にある鐘楼から点打されています。
ちなみに弁天堂は、浅草寺から1〜2分ほど歩いた場所にあります。本堂から仲見世通りに向かい、途中で左方向に進むと「弁天山」と呼ばれる小高い丘が見えてくるので入りましょう。すぐ隣りには弁天山児童公園があるので、こちらを目印にしてください。
・狸の伝説が残る「鎮護堂」
「鎮護堂」は狸に関わりのあるお堂です。江戸から明治にかけて、この辺りには多くの狸が生息していたそうです。浅草寺は狸たちの乱行に困っていたところ、当時の住職・唯我韶舜(ゆいがしょうしゅん)大僧正の夢枕に狸が現れました。「われわれのために祠を建てて保護してくれれば、伝法院を火災から守り、永く繁栄させましょう」というお告げがあり、明治16年(1883年)に誕生したのが、鎮護堂です。
お堂の右側から顔を覗かせる2体の狸のやきものは、とても愛嬌がありますよね。しかしこのやきものは、本物の「お狸様の像」ではありません。
お狸様の像は、鎮護堂の裏手に鎮座していました。近くまでは入れないようになっていて、柵の外側からの参拝となります。よく見ると白い狐らしき置物もあり、不思議な空間が広がっていました。
ちなみに鎮護堂は、少しわかりにくい場所にあります。本堂への参拝後に行く場合は、宝蔵門をくぐり、仲見世通りを雷門方向に戻って右折し、伝法院通りに出ます。少し歩くと右手に鎮護堂の旗看板が見えてくるので、こちらを入口の目印にしましょう。ぜひお狸様に会いに訪れてくださいね。