浅草演芸ホールを徹底解説!寄席の楽しみ方や番組表の見方を知ろう!

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下町情緒に溢れた江戸の雰囲気を残す浅草は、東京有数の観光名所。ここに建つ「浅草演芸ホール」は、思い立ったとき気軽に落語を楽しめる寄席(よせ)です。とはいっても、「そもそも落語を聞いたことがない」「寄席の作法や楽しみ方がわからない」という人も多いでしょう。そんな方でも心配は無用!浅草演芸ホールは、落語初心者でも入りやすい親しみ溢れる演芸場なのです。今回は実際に寄席を訪れて落語を体験し、数々の魅力をその身で感じてきました。

浅草演芸ホールとは

「浅草演芸ホール」は、昭和39(1964)年にオープンした東京の落語定席のひとつ。落語定席とは、365日・年中無休で落語の公演を行う寄席のことです。当時は「浅草フランス座」の4階・5階部分を増築した場所で公演していましたが、のちに建物1階部分に移動されました。

オープン当時から多くの落語家が出演し、これまでに日本を代表する落語家やお笑い芸人を数多く輩出したことで有名です。

昔から変わらない演目や雰囲気を楽しめるとして、娯楽の中心がテレビやインターネットに移った現代においても、今なお多くのファンが足を運んでいます。

 

紅白の提灯に賑やかな幟(のぼり)、寄席文字の看板と人目を惹く外観に、通りすがりの観光客は次々と足を止めて記念写真を撮っていました。とくに外国人観光客にとっては、定番の撮影スポットとなっているそうです。

しかし外観の写真は気軽に撮影できるとしても、中に入るには、チケットの予約や観覧マナー、きちんとした落語に対する知識がないと入りづらいと感じるかもしれません。

ここで一言!浅草演芸ホールの寄席は、気軽に入れることを最大の特徴としています。

まず個人のお客さんの場合は予約不要。チケットは現地のテケツ(チケット売り場)で当日券を購入すればOKです(※10名以上の団体は1年前から予約可)。

予約がいらないので、その日の気分でふらっと立ち寄れるということ。服装も着物などでなく、普段着で大丈夫です。

11:40から始まる昼の部と、16:40から始まる夜の部がありますが、いつ入場していつ退場しても大丈夫。お芝居や映画と違って、入退場の自由度がとても高いのです。

落語は一席あたり15分前後で終わることが多く、「仲入り」と呼ばれる休憩時間を除いて次々と演者が入れ替わります。「たまたま1時間くらい空いたから、3~4席見て行こう」と気楽に楽しむも良し、「今日は昼の部から1日中満喫するぞ」と気合いを入れて出かけるも良し。誰でも自由に落語の世界を堪能できるのです。

行く前に知っておきたい落語・寄席の基礎知識

ここでは落語を鑑賞する前に知っておきたい基礎知識を簡単に説明します。知らずに行っても十分楽しめますが、知ってから行けばより楽しめること間違いなしですよ!

 

・真打ち(しんうち)、二ツ目(ふたつめ)、前座(ぜんざ)とは

真打ち、二ツ目、前座とは、落語家の階級のこと。

「真打ち」は一番高い階級で、寄席の番組の中でトリ(一番最後)を務められる階級です。トリを務める役を主任とも呼びます。

ここで間違えやすいのは、「真打ち=トリ」ではないこと。真打ちはトリを務められる唯一の階級ですが、トリ以外でも活躍します。

真打ちの次の階級が「二ツ目」。前座に続いて2番目に高座(落語における舞台のこと)に上ります。2番目に上るから、二ツ目というのですね。真打ちになるまでには、通常は10年ほどの修行が必要。真打ちへの道はとても厳しいのです。
 

前座を務めた桂 しゅう治さん

最後に紹介する「前座」は、番組の一番最初に登場します。昼の部が11:40分からなら、その始まりの時間に合わせて最初に高座に上がるのが前座の役目です。

ただし、前座は名前が番組表に載ることはありません。浅草演芸ホールの公式サイトのスケジュールにも、当日表に張り出される木の札を使った番組表にも載りません。そのためお客さんは、どんな前座が噺(はなし)をしてくれるのか、登場するまでわからないわけですね。これも寄席の楽しみのひとつといえます。

落語家が登壇している間、「メクリ」と呼ばれる出演者の名前を書いた紙の札が置かれますが、前座の名前はここにしか書かれていません。もし気に入った前座さんがいたら、これを見て名前を憶えておきましょう。もしかすると、将来名をあげて活躍するかもしれませんよ。

前座の役割は最初の登壇だけでなく、この後に次々と登壇する落語家やお笑い芸人などのスケジュールを管理し、予定より遅れていたら次の演者に短めでお願いするなど、全体の進行を管理しています。

落語と落語の間に座布団を裏返したり、メクリをめくったりして次の準備をする「高座返し」も前座の大切な役目です。

 

・色物とは

浅草演芸ホールで演じられるのは落語だけではありません。もちろん落語がメインなのですが、合間に「コント」「漫談」「マジック」「紙切り」といった大衆芸能が挟まれます。比率はだいたい全体の1/3ほどです。

表に掲げられた本日の演者一覧には、黒い文字の札と朱色の文字の札の2種類があります。この朱色の文字の札が「色物(いろもの)」と呼ばれ、落語家以外の芸人さんたちを表しています。昔は落語は黒、その他は朱墨で演題を書いていたため、今も「色物」と呼ばれています。

これらの「色物」は番組を華やかに彩り、番組全体に強弱をつけてくれる大切な存在!

落語の小道具は扇子と手ぬぐいだけですが、色物はさまざまな小道具や服装を使用して演じます。これもまた公演の楽しみのひとつでしょう。
 

・番組表の見方
 

入場時に受け取るプログラム

番組表は事前に公式サイトのスケジュールで確認できます。また入場の際に受け取るプログラムにも掲載されています。

一日に昼の部と夜の部の2つの番組があり、番組表にはそれぞれの演者とおおよその登壇時間が記されています。おおよそというのは、仲入り(休憩時間)を除き、休む暇なく次々とプログラムが進行するため、途中で多少のずれが生じることがあるからです。

先ほども説明したように、これを調整するのも前座さんの役割。トリの主任が登場するまでには、ぴったりと時間を合わせなくてはなりません。

また一方で、演者が変更になることも珍しくありません。事前に公開されている公式サイトのスケジュールや紙のプログラムでは、急な変更は反映できないので、当日表に掲示されている木札の看板で最新の情報を確認すると良いでしょう。
 

・仲入り
番組の中に記された休憩時間です。以前は昼の部・夜の部各1回ずつでしたが、現在は感染症対策のために換気する目的もあり、2回入ります。お手洗いなどはこの時間で済ませておくと良いでしょう。

寄席はいつ入場していつ退場しても良いのですが、落語家の噺の途中に立ってお手洗いに行くのはちょっと気が引けますからね。

 

・最低限の鑑賞ルールを覚えよう
古くから大衆演劇として親しまれてきた落語は、厳しいしきたりや難しいルールなどはありません。実際に気を付けなくてはならない鑑賞ルールは、次の点です。

スマホや携帯電話は消音に設定するか、電源を切るようにしましょう。館内は禁酒禁煙。劇場内では撮影・録音は禁止です(※この記事では取材許可を得て撮影しています)。

また、一度浅草演芸ホールの外に出たら、再入場はできません。もう一度入場したい時は、再度チケットを購入してください。

実際に浅草演芸ホールで寄席を体験してみよう

それでは実際に、浅草演芸ホールに足を運んでみましょう。事前予約は必要ないので、「ちょっと落語でも聞いてみようか」という気分になったら行きどきです。会社帰りに一人で立ち寄るのもいいと思いますよ。

 

・チケットの買い方

チケット売り場は正面右手にあります。ちなみに落語のチケット売り場は、チケットがなまって「テケツ」と呼ばれています。

ここで木戸銭(入場料)を払ってチケットを受け取ります。1回入場したら、何席聞いても料金は同じ。その気になれば、昼の部と夜の部をぶっ通しで聞くことも可能です。

チケットを手に館内に入ったら、次は「もぎり」をしてもらいます。もぎりのスタッフにチケットを渡すと、半分にもぎって半券を返してくれます。

昔ながらのチケットもぎりは風情がたっぷりで、コレクションにも最適。受け取った半券を持ち帰れば、良い思い出になりますね。

 

・座席は自由席
 

1階席

浅草演芸ホールの座席数は、1階が239席、2階が101席、合計で340席です。座席番号が付いていますが、基本的には自由席なので、空いていればどこに座ってもOKです。

1階席は映画館のような斜度が付いていないフラットタイプ。そのかわりに舞台である高座が高い位置にあるので、後ろの席でも演者の姿はよく見えます。
 

2階席

2階席はクローズしていることもありますが、ホール内のお客さんが増えてくると解放されます。2階席は斜度があり、高座全体を上から見下ろせるようになっています。

演者との距離感やライブ感が楽しめる1階と、全体を見渡せる2階には、それぞれの良さがあります。時間があればどちらも試して、見え方・感じ方の違いを楽しんでみましょう。
 

・実際の落語鑑賞体験

訪れた日は昼の部の開演時間前に席に着いたので、前座からゆっくり鑑賞できました。スルスルと幕が上がる瞬間はドキドキしますね。

はじめに登場したのが前座さん。その後は二ツ目さん、真打ちさん、色物の演者さんと、最初の仲入りまで間を置かずにテンポよく登壇します。

歌舞伎などの日本の伝統芸能は古い言葉遣いで演じるものが多く、現代語訳がないと内容が理解できないこともあるのですが、落語は違います。聞き慣れた言葉遣いで話してくれるので、初心者でもとてもわかりやすいのです。

鑑賞していて思ったのは、テレビで落語やコントを見るのとは違い、演者と客席の双方向性とライブ感を強く感じられたことです。落語家は客席の反応を見ながら演じ、ときにはお客さんを指名して語りかけることもあります。

お客さんも噺が佳境に差し掛かれば真剣に聞き入り、オチが面白ければ「わっはっはっ」と笑います。これはモニター越しで視聴するのではなく、実際の寄席に行かなくては体験できない面白さですよ。

落語家は一人で座布団に座って、複数の登場人物を演じ分けます。扇子や手ぬぐいしか手にしていないのに、扇子を団子の串に見立てたり、手ぬぐいを財布に見立てたりと、驚くほど多彩な状況を演じてくれます。

とくに食べ物を食べる場面は、音としぐさだけで見ている人たちを錯覚させるほどのリアルさ。ズルズルっと蕎麦をすする様子は、まるで客席におつゆが飛んできそうな臨場感です!

座った状態の狭い空間なのに、場面や場所が切り替わり、登場人物が生き生きと会話しているのがわかるのですから、本当に落語は庶民的でありながら奥深い伝統芸能だと感じました。

また、落語のあいだに色物を挟むことで、メリハリがついて飽きずに楽しめます。コントや漫談だけでなくマジック(手品)まであるのは驚きですね。

ところで、落語のネタというものは、前からこの日は何をやると決まっているわけではありません。その日の客層やお客さんの反応などを見て決めることもあるのだそう。

そして、なんと前の演者とテーマが被ってはならないという縛りがあるのです。たとえば、誰かが「子ども」がテーマの落語をすれば、次の演者はもう「子ども」は使えません。その次の演者が「お酒」をテーマにすれば、その次の演者は「子ども」と「お酒」が使えません。

つまり、プログラムの後半になればなるほど、縛りがきつくなるのです。どんな縛りにも対応できるように、真打ちと呼ばれる落語家は50以上のレパートリーを持っているそうです。さらに真打ちの中でもトリを任せられる主任級の落語家は、優に100を超えるレパートリーを持っているのだとか!びっくりですね。
 

・浅草演芸ホールでの飲食について

落語を鑑賞しながらゆっくり飲食できるのも、寄席の魅力のひとつ。浅草演芸ホールでは、売店で販売するお弁当や持ち込み弁当、お菓子などが食べられます。館内には飲料の自動販売機もあります。

売店で販売しているお寿司は1種類で、浅草でも創業100年近い歴史を誇る名店「浅草志乃多(しのだ)寿司」の「助六」。お稲荷さんが3つと干ぴょう巻きが入っています。このお稲荷さんはとても優しい味わいで、噛むとジュワーッと口いっぱいに甘さが広がります。干ぴょう巻きはたっぷりと具が多め。口に運びやすい稲荷と巻物は、落語のお供にぴったりです。

ただし残念なことに、現在はこの「助六」をホールで販売しない日が多くなっています。できればチケットを購入するときに「今日はお弁当を販売していますか?」と確認して、もし販売していなかったら、外で何か購入してから入場することをおすすめします。

あるいは、早めに外で食事を済ませてから入場するのもいいですね。浅草には老舗の食事処がたくさんあるので、ランチ・ディナーどちらも楽しめるはずです。

以前はホール内の売店でビールの販売を行っていたのですが、現在はアルコールの販売は休止しています。アルコールを持ち込んで中で飲むことも禁止なのでご注意ください。

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