神奈川県横浜市にある「野毛山動物園」は、入園無料で楽しめる憩いの動物公園です。JR「桜木町」駅から徒歩約15分という恵まれた立地にありながら、ライオン・キリン・ツキノワグマなど、お馴染みの動物たちに会えるのが魅力。エサやり見学やかわいい動物とのふれあい体験が無料なので、小さなお子さんを連れて行くのにもぴったりです。今回は実際に野毛山動物園を訪れて分かった見どころや、人気の動物たちの展示、お出かけ前に知っておきたい情報などを徹底レポートします。
野毛山動物園とは
野毛山動物園が開園したのは、昭和26(1951)年のこと。当初は遊園地と動物園を併設した「野毛山遊園地」としてオープンしました。横浜市で最初にできた動物園であり、豊富な動物展示やふれあい体験を楽しめるのはもちろん、希少動物の保全調査・研究活動にも力を注いでいます。
コンセプトは、“誰もが気軽に訪れ、憩い、癒される動物園”。動物をより身近に感じられる展示方法が多く、ふれあい体験もあるので、小さなお子さんの動物園デビューにもぴったりな場所なんです。
また、これだけ展示が充実しているのに、入園料が無料なのも嬉しいところ。横浜市民にとっては憩いの場で、子どものころから何度も遊びに来ているお客さんも多いそうですよ。
普通の動物園と比べて、お客さんと動物たちとの距離が近いのもポイント。たとえば「ライオンを見に行きたい」ではなく「ライオンのラージャーに会いに行きたい」、「ツキノワグマが好き」ではなく「ツキノワグマのサンペイとコマチが好き」というふうに、一匹ずつ名前を覚えてしまうほど動物たちに愛着を持っているお客さんもいるのだとか。
ちなみに野毛山動物園は入園無料ですが、園内の維持管理にはお金がかかります。園内にはライオン型の募金箱が設置されているので、動物園の力になりたい場合は、ぜひ募金をしてみましょう。
これまでに募金で集まったお金を使って、レッサーパンダやチンパンジーの展示場をメンテナンスしたり、授乳室の備品をリニューアルしたりと、動物や来園者のために有効活用されています。
かわいい動物がいっぱい!野毛山動物園の楽しみ方
それではさっそく園内を回って動物たちに会いに行きましょう。受付で園内マップを貰っておくと、迷わず目当ての展示に行けます。
ちなみに園内の所要時間は大体1〜2時間ほど。お気に入りの動物をゆっくり見たい場合は、半日程度あれば余裕を持って園内を回れます。
・大人にも大人気!もふもふの「レッサーパンダ」
野毛山動物園でもとくに人気なのが「レッサーパンダ」。ぬいぐるみのようなボディにしましまの尻尾がかわいらしく、子どもだけでなく大人にも大人気です。
ガラスや檻越しではなく直接その姿を見られることもあって、望遠レンズでキュートなしぐさを撮ろうと狙っている人がたくさんいました。
メスのイチゴ(10歳)は左利き。レッサーパンダは片手でエサを持って食べますが、イチゴはいつも左手でエサを持ちます。屋外で観察しやすいので、縦横無尽に動き回るかわいい姿をぜひ見てみてください!
・長寿のピーコと赤ちゃんに会える「チンパンジー」
レッサーパンダの展示からすぐ近くにあるのが「チンパンジー舎」。3つの檻に分かれているように見えますが、中で繋がっていて行き来できます。
チンパンジー舎では、昭和41(1966)年に野毛山動物園にやってきたピーコが人気者。今は55歳を超える高齢のチンパンジーです。
そのほか、コブヘイとミラクルのカップルがいて、2頭の子どもであるコウタロウに先日妹が誕生したばかり。家族で仲良く暮らす様子が垣間見られます。
・希少なカメも見られる「は虫類館」
きれいな館内が目を引く「は虫類館」は、大小さまざまな爬虫類が展示される屋内展示スペース。屋根があるので悪天候時でも安心で、ゆっくりと見て回る方が多いそうですよ。
なかでも注目したいのは、世界で希少な「ヘサキリクガメ」。野毛山動物園ではヘサキリクガメの飼育下での繁殖に日本で初めて成功し、世界中から熱い視線を送られています。
ちなみに成体(おとな)である2頭のヘサキリクガメを見比べると、うち1頭の甲羅がいびつに盛り上がっているのがわかります。これはこの子が違法に飼育されていた時の環境が悪かったためだそう。きれいな形に戻ることはなく、長く生きることが難しいかもしれないとのこと。ムシャムシャと元気にエサを食べている姿が印象的でした。
左手前はヘサキリクガメ、右手前はホウシャガメ、右奥にはキバラクモノスガメを飼育中。は虫類館では、無事繁殖に成功した子どものヘサキリクガメの誕生日を記載して展示しています。
・ラージャーはみんなの人気者「ライオン」
一般的にライオンといえばアフリカに生息するライオンをイメージしますが、野毛山動物園にいるのはとても珍しいインドライオンです。現在国内でインドライオンを展示しているのは、「よこはま動物園ズーラシア」と野毛山動物園だけ。
アフリカのライオンとの違いは、体が少し小柄で、たてがみが短く顔の周囲にしか生えないこと。特徴的なのは尻尾の先で、筆のような形をしたアフリカのライオンに対して、インドライオンはタンポポの綿毛のように球形に生えています。
野毛山動物園のライオンの名前はラージャー。インドの言葉で王様を意味します。年齢は14歳で、ライオンとしてはもう若いとはいえない年齢なのだそう。これからも元気で長生きしてほしいですね。
ラージャーは枯れ葉の上がとくにお気に入り!寒い時期はよくここでくつろいでいます。訪れたときは、枯れ葉の上にゴロンと寝転がる姿を見せてくれました。
動物たちは食事の前後になると、そわそわしたり動きが活発になったりと、普段とは違う様子を見せます。お食事タイムには動物園スタッフがエサをあげながら、その動物の詳しい説明をしてくれるのです。これがとても面白くてためになるので、ぜひ聞いておきたいところ!
野毛山動物園では曜日によって異なる動物のお食事タイムを公開しています。目当ての動物を見たい場合は事前にチェックして、園内散策のスケジュールを立ててみましょう。
・愛嬌のある表情がかわいい「タヌキ・テン」
ホンドタヌキは日本では珍しい動物ではありませんが、かわいい見た目と素早い動きで子どもたちに大人気!昼間でも活発に動き回っている姿が見られました。このエリアにはほかにも、ホンドテンや二ホンアナグマがいます。
近くの檻にいたホンドテンのチュウゴは、ずっと巣穴の中で丸くなっていました。寒い季節では雪に同化して見えるように、白っぽい冬毛になることでも有名です。
・ラブバードの異名を持つ「ボタンインコ」
野毛山動物園ではさまざまな鳥を観察できます。鮮やかな紅色のフラミンゴや、3〜7月ごろの繁殖期に美しい羽を広げるインドクジャクなどもいますが、ここでは「ルリゴシボタンインコ」を紹介しましょう。
腰にある瑠璃色の模様から名がついたルリゴシボタンインコ。通称“ラブバード”と呼ばれ、社会性が高く絆を大切にする性質があるインコです。
相性の良い個体同士でペアを作ると、とても仲良しになるのだとか。運良くエサの時間に訪れたときは、ヒマワリの種の殻を上手に外して食べるレアな姿を見られますよ!
・きれいな縞模様を間近で見られる「シマウマ」
縞模様が美しいシマウマは、エチオピア南部・ケニア北部などのサバンナ地帯に生息する「グレビーシマウマ」という種類。シマウマ種の中でも縞模様が細かく、お腹が白いのが特徴です。
訪れたときはちょうどシマウマの赤ちゃんが生まれた時期でした。慣れてきたら一般公開もされるそうなので、ぜひかわいらしい親子シマウマの姿を見に行ってみてくださいね。
・人懐っこさはNo.1!フレンドリーに接してくれる「キリン」
野毛山動物園のキリンは2頭。オスのそらとメスのモミジです。とくにそらがとても人懐っこいとのこと。
人工哺育で育ったからか人が大好きで、お客さんが近づくと物怖じせずに近寄ってきます。動物園スタッフのユニフォームを見ると柵のそばに来ることが多いので、エサやりの時間を狙って訪れてみるのもいいですね。
フレンドリーなキリンがグーンと顔を伸ばしてくる姿は、とてもかわいらしいもの!ほかの動物と比べて温厚な性格なので、小さな子どもでも観賞しやすいのが嬉しいですね。人気があるのも納得です。
なお、キリンとグレビーシマウマの展示場は同じ場所にあるので、時間帯によってどちらかが出ています。シマウマとキリンを両方見たい場合は、少し時間をずらして見に行ってみましょう。動物の体調や気温によっては、展示スケジュールが変更になる場合もあるそうです。
・実はアリ以外も食べる「ミナミコアリクイ」
アリクイといえば、主食はシロアリ!動物園でも毎日シロアリを食べているのでしょうか?答えはNO。大量のシロアリを確保するのはあまりにも難しいので、ひき肉やヨーグルトなどをブレンドしたエサを与えているそうです。ちなみに野毛山動物園にいるのがコアリクイで、よこはま動物園ズーラシアにいるのがオオアリクイです。
・太古の森に生息する飛べない鳥「カグ―」
野毛山動物園のマスコット的存在なのが「カグー」。カグーはニューカレドニアの森林にしか生息していないとても珍しい鳥で、ダチョウやペンギンと同様に空を飛べません。平成元年に横浜市の市政100周年を記念して、ニューカレドニア政府からペアのカグーが贈呈されました。
たまに髪の毛のように長い頭の羽を求愛や威嚇のときに逆立てることもあるそうです。
寒さが苦手なので、冬は屋内にいます。ガラス越しで少し遠かったですが、ぴょんぴょん跳ねながら動き回る様子がとてもかわいらしかったです。
野毛山動物園で展示しているカグーは2羽ともオスですが、横浜市繁殖センターにはほかの個体がおり、現在も保護・繁殖活動が行われています。
現在日本でカグーを展示している施設は野毛山動物園のみ!珍しいカグーを見たいなら、ぜひ野毛山動物園に行きましょう。
・横浜のランドマークを発見!おうちも見どころな「フンボルトペンギン」
野毛山動物園のフンボルトペンギンは5ペア10羽。ペンギン舎の近くには相関図があるので、それぞれの血縁関係を一目で確認できます。
ところで相関図にはトラックの絵がありますが、これは生まれた子どものうち一部が、ほかの動物園や水族館に引越ししたことを表しています。
ペンギンに限らない話ですが、ひとつの園の中だけでは血縁が近い動物同士のペアリングになりがちです。そこでほかの動物園や水族館と協力して、計画的に繁殖させて行くことになります。つまり相関図でトラックに載せられたペンギンは、遠くの動物園にお見合いに出かけたのです。
ペンギン舎にはいくつかの建物があります。よくよく見ると、形が「横浜ランドマークタワー」や「ヨコハマ インターコンチネンタル ホテル」ではありませんか!
建物にはちょうどペンギンが一羽入れそうな長方形の穴が空いていますが、その中はそれぞれペンギンのおうちになっています。よちよちと歩いておうちから出入りするペンギンたちの姿には、きっと癒されるはず。ぜひ彼らの自由気ままな生活を覗いてみてくださいね。
・カンガルーよりも小柄な「オグロワラビー」
「あっ、カンガルー!」なんて思うかもしれませんが、野毛山動物園にいるのはワラビーです。カンガルーと同じ仲間ですが、カンガルーよりも小さい種をワラビーと呼びます。
赤ちゃんが生まれるとお腹の袋(育児嚢)で育てることで有名ですね。大きな後ろ足をバネにしたジャンプを見せてくれます。
・秋田生まれの「ツキノワグマ」
巨体でのそのそと歩く姿が印象的なツキノワグマは、オスのサンペイとメスのコマチ。誕生日にはお客さんたちからたくさんのメッセージが届くほどの人気者です。
秋田生まれの2頭で、現在は23歳。大きな体を揺すりながらゆっくりと歩いたり、ハンモックで丸くなって寝ていたりと、のんびり過ごす様子を見られますよ。
・動物がいない展示スペース「しろくまの家」
最後に紹介する展示は「しろくまの家」。現在の野毛山動物園にシロクマ(ホッキョクグマ)はいません。それではなぜ、今もしろくまの家があるのでしょうか。
実は以前ここでホッキョクグマが飼われていました。ホッキョクグマがいなくなった園では、飼育施設を取り壊すのではなく、見学用に復元してはどうかとアイデアが出たそうです。現在ではお客さんが自由に中に入って、シロクマの大きさや中での暮らしを体感できるように生まれ変わっています。
頑丈なドアや鍵を見ると、猛獣を飼育・管理するのがいかに難しいかを実感できます。外のプールを見ると、「ここでホッキョクグマが遊んでいたのかな?」と、当時のイメージも沸いてきそうですね。
モルモットやハツカネズミとふれあえる「なかよし広場」
「なかよし広場」は、園内で唯一動物たちとふれあえるコーナー。事前予約制なので、遊びたいときは必ず予約してから出かけましょう。ふれあえる動物は、モルモットとハツカネズミの2種類。まずは注意事項などの説明を聞いてから、実際のふれあいタイムです。
モルモットはかごから抱き上げずに、そっと撫でたりブラッシングしてあげましょう。触れるととても温かく、筋肉がピクピク動いていることがわかります。
なかよし広場には登場するモルモットの写真入り一覧表が置かれていて、名前や特徴が記載されています。できれば自分が撫でているモルモットを見つけて、名前を呼んであげてくださいね。
ハツカネズミは小さくて体重も軽いキュートな動物。鼻をふんふんとさせながら腕を登ってきます。ふれあうときの注意点は、モルモットやハツカネズミの口元に決して指を出さないこと。びっくりして噛んでしまう可能性があるので、小さなお子さんを連れて行く場合はとくに注意しましょう。
モルモットとハツカネズミは、ふれあい広場での仕事は1頭1日1回のみ。お客さんが触った後は休憩時間になり、同じ日の別の回には違う子が登場します。
なかよし広場を利用したい場合は、野毛山動物園の公式サイトの予約システムを利用しましょう。子ども連れに圧倒的な人気を誇るプログラムなので、休日などは予約枠が埋まりやすいです。
なかよし広場のふれあい体験は1日に7回開催され、各回10組、1組5名(0~2歳の子どもは別途2名まで追加可能)まで参加できます。
なお、毎日10:20から始まる初回だけは、事前予約ではなく当日に現地で整理券を配布します。もし事前予約をしないで体験したい場合は、早めに来園して整理券をゲットしましょう。