東京都渋谷区にありながら、東京ドーム15個分もの広さがある明治神宮。初詣では例年、日本一の参拝者数を記録する神社としても知られています。境内は都心とは思えないほど豊かな緑に恵まれ、参道を歩いているだけでも癒やされるパワースポットでもあります。今回はそんな明治神宮を実際に訪れて、神社の歴史や参拝の作法、境内で訪れたい見どころまで一挙に紹介します。
明治神宮とは?
明治神宮は、第122代天皇の明治天皇と皇后の昭憲皇太后(しょうけんこうたいごう)を御祭神として祀っている神社です。明治天皇が1912(明治45)年、昭憲皇太后が1914(大正3)年に崩御されたことを受け、多くの国民から御神霊をお祀りしたいという声があがり、おふたりにゆかりの深い代々木の地に、1920(大正9)年11月1日に創建されました。
創建以来、日本国民の繁栄と世界平和を祈願する場所として多くの方に親しまれており、初詣の参拝者数は毎年日本一となっています。
御祭神をお祀りする立派な社殿はもちろんのこと、明治天皇が愛された自然や皇后のために整備された御苑、宝物殿、ミュージアム、境内池の源泉として有名なパワースポットなど、数多くの見どころが存在しています。
画像提供/明治神宮
広大な境内で見られる自然美は大きな見どころのひとつ。明治神宮ができる以前は、現在の御苑周辺を除いて何もない荒れ地のような景観が続いていました。創建に伴って全国から約10万本の木が奉献され、「永遠の杜(もり)」づくりが行われたのです。
この地に合い、いつもみずみずしい景観を見られるようにと、椎・樫・楠などの照葉樹(冬に葉が落ちない樹木)を中心に植樹。現在では自然豊かな森に育ち、多くの人々から都会のオアシスとして愛されています。
永遠の杜の自然を感じながら参拝しよう
ここからは、実際に明治神宮の参道を通りながら社殿までの参拝ルートを紹介します。今回はJR原宿駅の西口から出てすぐ目の前にある、原宿口の鳥居から参拝に行ってみました。鳥居をくぐってから社殿までは、約10分ほど参道を歩きます。左右には明治神宮の杜が広がっており、参道を歩きながら“杜の力”を感じられます。中央が砂利道、左右には石板が敷かれており、ベビーカーや足腰の悪い人でも通りやすく設計されているのが特徴です。途中の小川の上に架かる橋では、美しい紅葉を目当てに多くの参拝者が写真を撮っていました。下を流れる小川の水源は、明治神宮御苑内にある「清正井(きよまさのいど)」から湧き出る水だそうですよ。
歩いていると柵に覆われた大きな樅(モミ)の木を見つけました。昔からこの地には「代々木の大樅」という大木が育っていて、一説には「代々木」という地名が生まれた由来ともいわれているそうです。当時の名木「代々木」は、残念ながら1945(昭和20)年5月の戦火で焼失。現在の大木は新たに植樹されたものです。さらに歩くと、左側に「葡萄酒樽」が見えてきます。明治時代は庶民にも西洋文化が浸透しはじめた時代。明治天皇も西洋文化には好意的だったようで、断髪や洋装をはじめ、食文化においても洋食を率先して取り入れていたそうです。写真の葡萄酒樽は、ワインがお好きだった明治天皇のために、ブルゴーニュ地方の醸造元各社から贈られたものです。葡萄酒樽の反対側には、清酒の樽が並ぶ「清酒菰樽(こもだる)」がありました。こちらは日本の酒造各社から贈られたもので、おなじみの清酒銘柄がずらりと並びます。ちなみに菰樽とは、水辺に生える「まこも」と呼ばれる植物を粗く編んだものを酒樽に巻き付けたものです。酒樽が一面に並ぶ光景は壮観で、多くの人が酒樽を背景に記念撮影していました。
・堂々たる日本一の「大鳥居」
さらに進み、二股に分かれる道を本殿につながる左側へ向かうと、木造の明神鳥居としては日本一の大きさを誇る大鳥居が現れます。鳥居の高さは12m。柱間は9.1m、柱の径1.2m、笠木(かさぎ)の長さが17mある、立派な大鳥居です。迫力のある大鳥居をくぐり、本殿へと足を進めましょう。
・南手水舎で身を清める参拝の前には、社殿近くから東・西・南側にある手水舎で手や口を清めましょう。まず柄杓を右手に持ち左手から清めます。次に、柄杓を持ち替え右手を清めましょう。
さらに左の手のひらに水を溜めて、その水で口をすすぎます。柄杓には口をつけないように気をつけてください。次にもう一度左手を清めて元に戻したら、いよいよ本殿への参拝となります。(※現在は柄杓が撤去され、流水式で対応しています)
・三間社流造の立派な本殿巨大な柱と屋根が印象的な本殿は、立派な三間社流造の建物。戦禍によって一度は破壊されましたが、1958(昭和33)年に復興されました。
参拝の作法は、二拝二拍手一拝となります。まず賽銭を投げ、姿勢を正します。次にお辞儀を2回し、胸の前で2拍手し、両手を合わせたままでお祈りをします。最後に1回、深いお辞儀をするのが正式な作法です。
ちなみに本殿目の前の階段上からは撮影禁止なので気をつけましょう。本殿の手前には大きな御神木があり、存在感を示していました。遠くから見ると1本の木のように見えるのですが、近くに寄るとしめ縄で結ばれています。まるで夫婦のように寄り添って育っていることから「夫婦楠(めおとぐす)」と呼ばれています。
明治天皇と昭憲皇太后は仲睦ましくされていたことから、家内安全・縁結びの象徴とされる御神木です。こちらは1920(大正9)年に植栽され、戦禍をくぐり、今もなお立派な姿を見せています。木と木の間から拝する本殿に参拝する方も多いので、参拝後にぜひ仰いでみてください。