さいたま市・大宮駅のすぐ近くにある鉄道博物館は、鉄道ファンなら誰もが知る鉄道のテーマパーク。日本で最初の機関車から新幹線まで幅広い車両が保存・展示されており、見るだけでなく実際に体験しながら鉄道について学べるプログラムがたくさんあります。今回はそんな鉄道博物館を実際に訪れて、貴重な展示車両や運転シミュレーター、鉄道ランチメニューなどを体験してきました!予約必須のプログラムについても解説しているので、ぜひ館内を回る際の参考にしてください。
鉄道博物館とは?
鉄道博物館は、2007(平成19)年に、さいたま市大宮に開館した鉄道のミュージアム。実物の車両を展示する施設としては首都圏でも最大規模であり、鉄道車両や模型、運転シミュレーターなど数多くの施設があります。
貴重な車両を見られるのはもちろん、車両点検や機械の裏側、プロ監修の運転体験プログラムなど、子どもから大人まで楽しめる体験が揃っています。
実は立地も鉄道ファンを魅了する要素のひとつで、地上を走る高崎線や川越線などの電車と、東北・上越・北陸新幹線や埼玉都市交通ニューシャトル伊奈線が走る立体高架線の間に位置しています。一度に新幹線と在来線を楽しめる、鉄道好きにはたまらないビュースポットでもあるのです。
全国からその姿を拝みに訪れる人が絶えないという、お召専用機「EF58 61号機」など、珍しい鉄道車両に出合えるのも魅力。駅から続くプロムナードを歩いた先にある「デゴイチ(D51形426号機)」の前頭部展示など、記念撮影スポットも豊富にあります。
鉄道博物館の見どころは?貴重な車両展示エリアを一挙紹介
鉄道博物館に入ったらまず見ておきたいのが、エントランスホールの右側に広がる車両ステーション。実物の鉄道が数多く並び、さまざまな工夫が施された展示で各車両の歴史や特徴を学べます。ワクワクすること間違いなしの車両展示エリアを、さっそく見てみましょう!
・人気の車両が集結!圧巻の「車両ステーション」
一番人気の展示「車両ステーション」は、日本の鉄道開業時に走行していた1号機関車から人気を博した新幹線まで、計36両もの車両が集結しています。ここからは、とくにチェックしてほしい車両を一挙紹介します。
やはり外せないのは、日本初の鉄道が開業した1872(明治5)年に活躍した「1号機機関車(150形蒸気機関車)」です。当時の日本では蒸気機関車を製造できなかったので、10両の機関車をイギリスから輸入。最初に完成したのがこの「1号機機関車」でした。新橋と横浜を結ぶ移動手段として採用されたことで有名です。
新橋・横浜間は約29kmあるため、歩くと丸1日かかります。鉄道ができたことで、わずか53分程度で移動できるようになったのです。
後ろの客車は木造で、9〜10両が連なって走行します。車両のクラスは上・中・下などがあり、今の新橋〜桜木町間の運賃は480円ですが、当時の価格を今の貨幣価値で換算すると、下等が約5,000円、中等で約10,000円、上等で約15,000円でした。今と比べるとかなり高いものの、庶民にとって払えない金額ではなかったようです。
1997(平成9)年には、鉄道車両としては初めて国の重要文化財に指定されています。
次に紹介するのは、キハ41300形気動車「キハ41307」。レトロでどこか懐かしい外観だけでも見応えがありますが、こちらはぜひ中に入ってもらいたい車両です!
車内を覗くと、昔にタイムスリップしたかのような光景が広がります。山梨県から長野県を結ぶ「小海線」の車窓風景の実写映像と走行音が演出されているので、本当に旅をしているかのような気分を味わえるんですよ。田園風景を眺めながらまったり過ごしたい方にはおすすめです。
また、車両ステーションでは、毎日定時イベントが開催されています。注目なのが、毎日15:00から約10分程度行われる「転車台回転・汽笛吹鳴実演」です。
中央にある「C57 135蒸気機関車」をのせた転車台が、大きな汽笛の合図とともに回転する光景は見物!なかなかの迫力で、始まると車両ステーションに人が集まり撮影タイムがスタートします。
このほかにも無料の定時開催イベントがいくつかあるほか、車両の特徴を学べる仕掛けがあらゆる角度から施されている点も注目です!
たとえば、222形新幹線電車(200系電車)では、無料定時イベント「200系新幹線の連結器を見てみよう」(毎日14:15から約15分間)を実施しており、楽しみながら学べる工夫がいっぱいなんです。
200系新幹線の斜め前には、ミニ200系新幹線の形をしたモニターが設置。同新幹線は豪雪地帯を走行するため、前頭部に愛称「スカート」と呼ばれる大型の「スノウプラウ」が取り付けられているのが特徴。モニター下のボタンを押すと右手奥に本物の新幹線を眺めながら、雪の中を走行する映像も楽しめるのです。スカートがしっかりと雪除けの役割を担っていることがよくわかりますよ。
さらに222形新幹線の反対側に行くと、地下に降りられる階段があります。下に降りると、なんと222形新幹線の裏側が見られるのです。実際の車両では覆われている内部の機構も剥き出しになっているので、近づいて仕組みをじっくりと観察できるのがうれしいところ。
脇にある階段を登ると「222形(200系)パンダグラフ上げ下げ体験」にも挑戦できます。スイッチを押すと、架線から電気を取り入れるための装置であるパンダグラフの動く様子が見られます。新幹線について上から下まで隈なく学べる興味深い展示なので、車両好きは要チェックですよ!
・現実ではありえない組み合わせの走行も楽しめる「鉄道ジオラマ」
本館2階には、幅約23m×奥行約10mの大型鉄道ジオラマがあります。毎日11回「鉄道ジオラマ解説プログラム」を実施。解説員の方が訪れる人たちの表情や様子を見ながらタイミングを見計らって説明してくれるので、ワクワク感が違うんです。
約150年前に走行していた1号機関車と現役の列車が併走して走る姿を見られるなど、現実の世界ではありえないシーンを楽しめる点もポイント。工夫された照明演出で、昼間だけではなく夕方や明け方のシーンなども見られますよ。
・鉄道のお仕事に挑戦!「仕事ステーション」
南館1階にある「お仕事ステーション」では、鉄道を支えるさまざまな仕事について学べます。入口付近に「仕事・未来チケット」と呼ばれるQRコード付きのカードがあるので、手に取って進みましょう。クイズに参加するたびに合格スタンプが貯まっていき、ワクワク感を増幅させてくれますよ!
また仕事ステーションの前には、人気の新幹線「E514形新幹線電車(E5系電車モックアップ)」の実物大模型があるので要チェック!グリーン車の上位クラスである「グランクラス」のラグジュアリーな車内も覗けます。
・鉄道を知ればもっと好きになる!「歴史・未来・科学ステーション」
南館3階の「歴史ステーション」では、鉄道の歴史を大きく6つの時代にわけて紹介。その中でも興味深かったのは、鉄道が開業したことで「時間」の数え方が変わったこと。
江戸時代の日本では、今のような時間の数え方ではなく、多くの人は各地の寺院の「時の鐘」を頼りに、時間を感じていました。かなりアバウトだったんですね。しかし鉄道においては、おおよその時間の数え方では、事故が起きかねません。
そこで明治政府はこれまでの旧暦を改め、西洋諸国と同様の太陽暦へ改暦。時間の数え方も、鉄道が入ってきたことで進化したのです。そんな歴史を視覚的に表現するため、歴史ステーションのエントランス部分には、実物大の「時の鐘」が再現されています。
さらに奥へ進むと、文字盤に数字が書かれた今と同じタイプの時計が設置されています。目には見えない「時間」という共通の決まりごとが、鉄道とともに広まっていったなんて興味深いですね!
そのほかにも昔の新橋駅や、1種類の切符しか買えないため金額の違う券売機が横にずらりと並ぶ様子なども再現されていました。
「未来ステーション」は、数十年後の鉄道の姿が描かれた空間です。先ほど仕事ステーションで利用した「仕事・未来チケット」をかざしてアバターを作成し、未来の鉄道などを体験できるスペースです。
本館2階・3階に位置する「科学ステーション」。こちらでは「鉄道はなぜうまく曲がれる?」「信号が変わるしくみは?」などの不思議について、わかりやすいコンテンツで学べます。子どもと一緒に訪れれば、科学への興味を育てる良い機会になりそうですね。