異国情緒漂う街、長崎。鎖国時代から日本の玄関口として海外交流を盛んに行うなど、西欧文化の影響を受けながら、独自の文化や歴史を育んできました。そんな長崎の歴史や文化を深く味わえる場所、それが長崎歴史文化博物館です。数多くの歴史資料や工芸品を備え、学術的な視点で学べるのはもちろんのこと、企画展や体験展示も豊富で、子どもから大人まで楽しめます。ここでは、料金やアクセスなどの基本情報からおすすめのポイントまで、長崎歴史文化博物館の魅力を紹介します。
長崎歴史文化博物館とは
「長崎歴史文化博物館」は、長崎県と長崎市が一体となって建築・運営に取り組む、全国でも類をみない博物館です。「長崎奉行所」の一部を復元したエリアをもつユニークな造りになっています。81,000点におよぶ海外交流史の貴重な美術工芸品・歴史資料を収蔵。国認定重要美術品「南蛮人来朝之図」や「唐蘭館図」からは、南蛮貿易や鎖国下の交易で栄えた長崎の様子が伺えます。また「のぞき絵」「パズル」などの体験コーナーが設けられた展示や、密貿易や漂流民を取り調べる寸劇などを通じて、長崎ならではの歴史や文化を楽しく学べます。さらに、ステンドグラスや銀細工の製作体験などが行える体験工房もあり、五感をフルに使って長崎の伝統に触れられる点もおすすめです。
奉行所に、タイムスリップ
博物館の中には現代風な外観をした建物もありますが、長崎歴史文化博物館は違います。その見た目からすぐに「歴史」を感じられます。2005年開館とは思えない、白壁と白銀の屋根瓦、立派な石垣が美しいお城のような外観です。21世紀に建てられた建物なので当然歴史は浅いのですが、その造りの良さから「外見が素晴らしい」「まるでタイムスリップしたよう」と、観光客にも人気です。写真映えする外観は、撮影スポットとしてもおすすめです。
入口から向かって左側は歴史展示、右側は長崎奉行所の再現建物になっています。おすすめポイントは、右側の長崎奉行所。長崎奉行所立山役所跡地に復元した奉行所ゾーンは、当時の資料をもとに再現されています。そのかいあって、リアリティは抜群です。例えば、エリアの一部は床が板張り・畳張りになっていて、観覧時には靴を脱がないといけないという徹底ぶりです。さらに、長崎奉行が応接に使った部屋「書院」は、縁側の厠にいたるまで再現されています。また、貿易品の荷改め・大改(長崎奉行の検分)をする際などに使われた「対面所・次之間・使者之間」には、生糸や反物、象牙などが展示されています。貿易品を眺めると、当時の貿易の様子を伺うことができるでしょう。鎖国時代・江戸時代にタイムスリップしたような感覚を味わえる、おすすめの施設です。
ボランティアがつくるアットホームな展示
奉行所ゾーンの「長崎奉行所立山役所」では、20分程度の寸劇が行われています。実は、これが奉行所のちょっとした名物になっています。内容は、御白洲(今でいう法廷)を再現した部屋で、犯科帳(長崎奉行所の判決記録集)を元に裁判の様子を再現するというものになります。特徴としては、舞台と客席はひと続きになっていて、演者と観客の距離も近いです。また、開始前からトークや質問で観客を引き込んでくれます。これだけでも十分楽しい雰囲気ですが、人気の秘密は、ボランティアの方が演じていることにあります。約20名の方がボランティアとして参加してつくる寸劇は、たどたどしさや素人感を滲ませます。しかし、その手作り感がかえってアットホームな親しみや楽しさを感じさせてくれるのです。寸劇は土日祝日限定で、11:00、13:30、14:30、15:30の1日4回行われます。タイミングが合えば観賞してみることをおすすめします。
なお、長崎歴史文化博物館では、約150名の方がボランティアとして活動しています。奉行所の他にも、歴史資料展示では、展示案内や誘導を行っています。より深く歴史資料を楽しみたいときや、気になることが出てきたときには、ボランティアの方々にお話を聞いてみるのもおすすめです。
「あの有名人」ゆかりの地
少しマニアックなポイントになりますが、長崎奉行は「とある有名人」と関係があります。その人物とは遠山景元。「遠山の金さん」のモデルとなった人物です。長崎歴史文化博物館には復元された長崎奉行所がありますが、かつての長崎奉行所で長崎奉行を務めていた人物に「遠山景晋」という人物がいました。この景晋は、景元の父にあたります。つまり長崎奉行所は、「遠山の金さんのお父さん」と関係が深い施設なのです。
長崎奉行所ゾーンにある長崎奉行所シアターでは、「84代長崎奉行の遠山左衛門尉景晋が長崎で過ごした1年」を映像で紹介しています。遠山景晋を演じるのは、俳優の風間杜夫さんです。江戸からやってきた奉行が長崎で送る多忙な日々を、迫力の3D映像で描き出します。風間杜夫さんのファンや「遠山の金さん」のファンなら、より深く楽しむことができます。
また、坂本竜馬や勝海舟など、幕末の志士とも関係が深い長崎。長崎歴史文化博物館では、大河ドラマ「龍馬伝」が放送されていた2010年に1年を通して企画展「長崎奉行所 龍馬伝館」(2010年1月9日~2011年1月10日)を開催するほどの熱の入れようでした。常設展にも、坂本竜馬たちに関する展示があります。この機会に、幕末に思いを馳せてみるのもいいでしょう。
見て体験して学べる歴史展示
長崎奉行所の反対側にも、常設展があります。ここでは、南蛮貿易から朝鮮通信使、オランダとの交流、キリスト教など、西洋との出会いから近代に至るまでの歴史を学べます。「解体新書」などの有名な書物や、鉄砲・刀、焼き物・屏風など、美術工芸品や資料の数々が展示されています。中でも、南蛮屏風がおすすめです。異国情緒豊かで煌びやかな美しさは、一見の価値があります。
また、資料や模型展示の合間には、体験ゾーンが設けられています。例えば、坂本竜馬と写真を撮れるブースでは、当時の写真撮影を再現しているため、なんと撮影が終わるまで15秒間じっとしていなければなりません。「昔の人が写真ひとつ撮るのに必要とした苦労」を、身をもって経験できます。その他にも、昔の産物が現在のお金でどのくらいの値段か当てる「目利き体験」、「パズル」「のぞき絵」「印刷所の職工体験」など、五感をつかって学べる展示がたくさんあります。普通の資料では飽き飽きしてしまう子どもでも楽しめる工夫が凝らされています。さらに、150インチ大型マルチスクリーンによる展示では、「天正遣欧使節」や「坂本竜馬と勝海舟」など5つのストーリーを迫力の映像で描きます。奉行所の展示も合わせると、見ごたえたっぷりの常設展示と言えるでしょう。短い時間で回ると駆け足になってしまい、すべてを十分に楽しめません。じっくり楽しむのであれば、1~2時間程度の時間を確保して観覧することをおすすめします。
歴史に興味がなくても楽しめる企画展
長崎歴史文化博物館では、常設展のほかに、様々な企画展も行っています。歴史的テーマはもちろんのこと、最新技術やアニメなどのサブカルチャーまで、幅広い分野にスポットをあてています。例えば、「チームラボアイランド -学ぶ!未来の遊園地- in 長崎」(2017年7月15日~9月3日)といった最新のデジタルテクノロジーを用いた知育企画展や、「お化け屋敷で科学する!in 長崎」(2014年7月19日~8月31日)というユニークなものなど、最新技術やサイエンスを取り上げることもあります。
他にも、「PIECE OF PEACE レゴ®ブロックで作った世界遺産展」(2018年7月21日~9月2日)、「ジブリの大博覧会~ナウシカからマーニーまで~」(2017年4月15日~6月25日)、「エヴァンゲリオン展」(2016年7月2日~9月4日)など、アニメや玩具をテーマにした企画展も行われています。レゴやアニメがテーマなら、子どもから大人まで気軽に楽しめます。子ども向けの企画展は夏休みに合わせて企画されることが多く、家族でのお出かけにぴったりです。企画展スケジュールは公式ホームページから確認できます。「常設展はちょっと退屈そう」と思っても、興味のある企画展が見つかる可能性が少なくありません。面白そうな企画展がないかチェックしてみて、興味を引く企画展があれば、それを目当てに行くのもおすすめです。
長崎を作って感じられる体験工房
最後に紹介するのが、伝統工芸体験工房です。長崎が誇る伝統工芸「長崎刺繍」「現川焼」「銀細工」「長崎染」「ステンドグラス」の5種類の体験ができます。長崎市は、長崎伝習所事業、長崎市伝統工芸人材育成事業を実施しています。それらの事業で活動してきた5つの塾の塾生が、工芸品の製作体験をサポートします。ここでは、銀細工とステンドグラスを紹介します。
欧州から伝わった宝飾技術をもとに生まれた長崎銀細工ですが、「長崎銀細工研究塾」では、アクセサリーの制作体験をすることができます。体験料金は1,000円で、所要時間はペンダントでは1~2時間程度、ハートのアクセサリーなら30分~1時間程度です。江戸時代には献上品として名を残した長崎銀細工を、自分の手で作る貴重な体験ができます。ただし、小学生から高校生は、体験に制限があるので注意が必要です。
「長崎やけんステンドグラス塾」では、ステンドグラス制作を体験できます。大浦天主堂をはじめとする西欧風の建物で使われているため、長崎のイメージにぴったりのステンドグラス。優美に輝くステンドグラスをつかって、自分の手でキーホルダーなどの小物やランプなどの工芸品を制作できます。旅の記念になるだけでなく、ギフトとしても喜ばれるでしょう。小作品なら、所要時間40分程度、料金400円から体験できます。旅の思い出をカタチに残したい方におすすめです。
なお、体験できる伝統工芸の内容は毎日異なります。実施内容は、公式ホームページのカレンダーで確認が可能です。また、予約なしでも体験は可能ですが、希望人数によっては次の回になるなど、希望通りに体験できない可能性があります。確実に希望の体験をするために、事前予約をおすすめします。
長崎歴史文化博物館の料金
常設展料金
- 大人 600円
- 小中高生 300円
企画展料金
- 企画展によって異なります
体験工房料金
長崎銀細工研究塾
- アクセサリー作り:1,000円
長崎陶芸復興塾(現川焼うつつがわやき)
- 電動ろくろ体験又は手回しろくろ体験:1,100円~
- 絵付け体験:600円
長崎の染塾
- 型絵染め:500円~
長崎やけんステンドグラス塾
- 小作品:400円~
- 大作品:1,000円~
長崎刺繍再発見塾
- ペンギン、桜の刺繍:各1,000円
- 糸より体験:100円
長崎歴史文化博物館の割引クーポン
前売割引
前売券取扱窓口(チケットぴあ・セブンイレブン各店「Pコード673-620」)にて、前売券を購入すると、常設展が前売料金になります。
常設展
- 大人:通常600円→480円
- 小中高生:通常300円→240円
長崎県内の小・中学生は常設展無料
長崎県内の小・中学生は常設展が無料になります。企画展料金は企画展によって異なります。
長崎歴史文化博物館の営業時間
展示ゾーン・ショップ営業時間
- 4月~11月 8:30~19:00(最終入館18:30)
- 12月~3月 8:30~18:00(最終入館17:30)
※12月30日~1月3日10:00~18:00(最終入館17:30)
伝統工芸体験工房・貸工房
- 9:00~18:00
定休日
- 第3火曜日(ただし、祝日の場合は翌日が休館日になります)
※その他メンテナンスの為休館する場合があります。
長崎歴史文化博物館のアクセス
公共交通機関を利用する場合
- JR長崎本線「長崎」駅より、路面電車「桜町電停」下車。徒歩7分
- 路線バス「桜町公園前」下車。徒歩3分
車利用の場合
- 長崎自動車道「長崎芒塚IC」より諏訪神社方面へ10分
長崎歴史文化博物館の駐車場
駐車場詳細
- 住所:長崎県長崎市立山1丁目1-1
- 駐車台数:一般車両62台
- 営業時間:24時間
- 料金:8:30~22:00 140円/30分
- 22:00~翌8:30 800円/1泊
※ 館利用者は、3時間まで100円/時となる割引券があります
※ 障害者手帳(身体障害者手帳・療育手帳・精神障害者保健福祉手帳)保持者はサービス券があります
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