3階に続く階段の壁に貼られた写真の数々にも、歴史が詰まっています。
3階の常設展示「コレクションモール」では、向かって左側に日本の古典人形、右側に西洋のアンティークドールがディスプレイされています。
まずは日本の古典人形から。人形は本来、人の災いをうつす“身代わり”の意味がありました。「そうした信仰上のものだった頃や、親が子供のために作るおもちゃとして作っていた頃は草木や紙といった身近な素材が使われていましたが、量産されるようになると、素材も技法も多様化。さまざまな工夫が凝らされるようになっていきます」(長谷川さん)。
ここでは、江戸時代後期から昭和初期にかけて製作された人形の数々が楽しめます。写真の人形作品は、長谷川さんいわく「うちの看板娘」。人間国宝・平田郷陽の「粧(よそお)ひ」で、この人形を撮影するために遠方からやって来る方もいるのだとか(長谷川さん談)。
訪問時は、期間限定の「市松人形展 慈しまれてきた人形たち」が開催されていました(2022年3月27日(日)まで開催予定)。ここは常設展示室内なので、入館料だけで見ることができます。
西洋の古典人形コーナーは、アンティークドールがずらり。
19世紀、ヨーロッパのブルジョア階級の貴婦人たちの間に流行したビスクドール。“ビスク”とは、菓子の「ビスケット」と同様、フランス語の「ビスキュイ(二度焼き)」が語源。成形したパーツを低温で二度焼くという製法で作られています。
宗教や王侯貴族の儀式、祭り、人形劇など、人形の用いられ方はさまざま。近代になると、工芸的・美術的価値が認められるようになります。また、人気が出ると量産されるようになるものもありました。
キューピー人形。アメリカ生まれですが、実は最初に作られたのはドイツとのこと。
人形師の工房。左側が日本の市松人形、右側が西洋のビスクドールの作り方の解説です。動画により、人形の製作工程や細かな職人技を見ることができます。